仕事の内
無事にデルプフェルト街門まで戻ってこれたことに安堵する。
魔物と遭遇せずに済んだのは幸いだが、さて、この件をどう報告したものかと考えていると、憲兵がぞろぞろと詰所からやってきたようだ。
縄で腕を縛った男達を3人も連れているんだから、それも当然の対応だよな。
数名いる憲兵の中でもリーダー格と思われる男が一歩前へ出て訊ねた。
「野盗か?」
「詳細を話したいんだが、よければエトヴィンさんを呼んでもらえないか?」
「ん? 小隊長と知り合いか?
もうすぐ町内巡回から戻るはずだが、お前さんは?」
名乗り出る前に、後ろでなりゆきを見守っていた男が言葉にした。
「その少年が小隊長の話してたトーヤ君じゃないか?」
「なるほどそうか、お前さんがあのトーヤ君か。
噂のフィヨ種を連れていないから確信が持てなかったよ」
あー、そういえばそうだったな。
完全に忘れていたが、今フラヴィは人の姿になっている。
しかしこれを説明すると色々問題になる可能性が高い。
どうしたもんかと悩んでいると、エトヴィンが巡回から戻ってきたようだ。
「おぉ、久しぶりだな、トーヤ。
町に戻ったのか?」
「今さっき着いたばかりなんだ」
「そうか。
色々と聞きたいことがあるが、かまわないか?」
「俺もそうお願いしようと思ってたんだ」
ぞろぞろと集まった憲兵達を散らせるエトヴィンに続き、俺達は詰所に入る。
男達は別に入れる場所があるようなので、口を出さずにそのままお任せした。
詰所内は殺風景の一言しか出てこない部屋だった。
簡易的な調理場と宿舎はついているが、ベッドくらいしか使う機会もないんだよなとエトヴィンは楽しそうに笑う。
俺個人としては設備がもったいないと思えてしまうが、彼を含め詰所にいる憲兵の多くが料理はあまり得意ではないらしい。
小さな会議室のような場所に通された俺達は、彼に言われるまま席に座った。
「さて。
どうもトーヤは無法者と出遭う確率が高いみたいだな」
「正直笑えないくらい困ってるよ。
まぁ、そのおかげで出逢える縁ってのもあるみたいだけど」
「……気になっていたんだが、あのフィヨ種の子はどうしたんだ?」
あれだけ目立ってた子がいないんだ、そりゃ聞かれるよな。
下手な嘘はつけないし、"もしも"のことは口が裂けても言いたくない。
それがたとえこの場をしのぐために必要な言葉だとしても、口にしていいことと悪いことがある。
やはり話すしかないだろうな。
だが、その前に……。
「連中の件も含めて、これについてローベルトさんに報告しようと思ってたんだ」
「……こいつは……まさか……」
ことんとテーブルに置いた指輪へ視線を向けるエトヴィン。
そう時間をかけず、眉間にしわが寄っていく。
「……なるほどな。
こいつの持ち主については言及を控えるが、大方の予想はつく。
なんならローベルトさんのとこで報告を聞いてもいいぞ?
後々聞くのも二度手間になるし、俺も聞くべき案件だろう」
思わぬ提案をされた。
少々気になる言葉も飛び出していたが、その方がこちらとしては助かる。
「いいのか?
ギルドまでついて来てもらうことになるんだが」
「それくらい憲兵の仕事の内だぞ」
声に出して笑いながら気にすんなと言ってくれた。
それならお言葉に甘えるとするか。
「それじゃあギルドですべて報告するよ。
ここだと少し話し辛いこともあるし」
「あぁ、かまわないぞ」
立ち上がった俺達は、憲兵詰所を出てギルドへ足を進める。
ギルドまでエトヴィンと他愛無い話をしながら色々と考えたが、やはりしっかりと説明する必要があるような気がしてならない。
彼は真っ直ぐな人物だし、頭の固い価値観も持っていない。
だからといって柔軟すぎる対応を求めざるをえないフラヴィの件に驚愕するのは目に見えてるが、それでも嘘をつくことだけはしたくないと俺には思えてしまう。
この子のことも最初から心配してくれていた。
そんな彼には誠意を持って対応するべきだ。




