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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第六章 僭称するもの
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複雑で粗雑な扱い

 初めは軽く戸惑っていたが、料理のお蔭か素直にふたりは話し始めた。

 やはりというべきか、指輪の持ち主と関係があったようだ。


 野盗のようなことをしているのもそれに通ずるが、俺が考えていた以上に複雑で粗雑な扱いを受け続けたらしい。


「……俺達だってこんなことしたくねぇよ。

 でもな、どこにもねぇんだよ、仕事なんて」

「しまいにゃドブさらいでも毒を入れてるなんて言われるようになっちまった。

 そんな俺達がいったいどんな仕事に就けるってんだよ……」


 ドブに毒を入れたところで意味はない。

 現代の日本のように汚水を浄化するシステムがこの世界にはないんだから。


 そんなもの、ただの言いがかりだ。

 理由はなんだっていいんだろう。


 そういった状況に指輪の持ち主は印象操作をした。

 もしくは直接的に関わったのかもしれない。



 このふたりは元冒険者で、現在は除名されているようだ。

 それに関してもギルドに圧力をかけられたことが大きな理由らしいが、この国ではなく南にある大国の出身の彼らは、裏切られたように逃げてきたんだと話した。

 新天地でもう一度出直すつもりだったが、この国最南端の町クラテンシュタインの冒険者ギルドで登録を拒否されたそうだ。

 一度でもそういった容疑のかかった者を、わざわざ詳しく調べてまで冒険者として復権させることは非常に稀らしい。


 ハイリスクな連中を使おうって方が無茶だわな。

 そう男は乾いた笑いを浮かべるも、その瞳では涙しているように俺には見えた。


 これは事実だ。

 嘘を言っているとはとても思えない。

 男達から心の揺らぎは微塵も感じない。

 あるのはただ怒りと悲しみ、そして復讐心だ。

 トシュテンと名乗る男ほど強烈ではないが、それでも相当強い憎しみが混ざったものを感じた。


 今までどんな悪事をしてきたのか聞いてみたが、スリや窃盗のみで、それも小額や食べ物だったと暗い表情で話した。


 悪党にもなりきれず、表の世界には戻れない。

 彼らができることはもう"裏"しかないんだと、エルルを攫おうとしたらしい。

 まるで腹をくくったようにも思える覚悟の行動だが、そんな理由で襲われたこの子はたまったもんじゃない。


 この世界の法律がどういったものなのかはわからない。

 しかし、もし冒険者だけでなく一般人にもこういった扱いをしているんなら、こいつらだけじゃなくもっと多くの人が辛い目に遭っているということになる。

 それを変えることは俺にはできないし、深く関わりを持つこともないだろう。

 相手はその国の、最悪の場合は世界の法と戦う必要になるかもしれないからな。


 でも、俺にだってできることがある。


「これから町に向かうが、お前らには自分の足で歩いてもらう。

 ただし足の縄を解くだけで腕の縄は解かない。

 この子達に危害を加えようとすればその時点で両断する。

 斬られたことすらわからないほどの速度で、なんのためらいもなく――」


 冷たく言い放つ俺の言葉に、ふたりは恐れおののく。

 だが続く言葉に、男達は目を大きく見開いた。


「お前らが仕出かした罪は罪だ。

 ギルドカードを見ればわかるらしいからな。

 そいつをすべて清算した上で、二度と悪事を働かないと憲兵やギルドに誓え。

 そしてそれを生涯実行し続けるなら、俺が口添えをしてやる」

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