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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第六章 僭称するもの
150/700

必要ない

 面白いように表情がコロっと変わった男どもへ、俺は声色をより冷徹な口調に変えて強く言い放った。


「これについてお前らが黙るつもりなら、こちらにも考えがある」

「……な……何を……」

「人攫いってのは未遂でも重罪だ。

 そんなやつらをわざわざ憲兵に引き渡す必要があるのか?

 それもここから町へ連れ帰る価値(・・)があるとも思えないな」


 さらに血の気が引いていく馬鹿どもを見て、不思議となんの感慨も湧かない。

 実際に置き去りにはしないが、気絶させて町まで引きずれば静かでいい。

 こいつらが小悪党だってことは、先ほどの話で確定してる。

 あとは憲兵詰め所に放り込むだけで十分だろう。



 俺の言葉に身の危険を感じたんだろう。

 声をうわずらせながら必死の形相で男どもは言葉を返した。


「…………お、おい……冗談……だろ?」

「……俺たちを憲兵に引き渡せば、金に……そうだ! 金になるぞ!?」

そんなはした金(・・・・・・・)、俺には必要ない。

 金を稼がなきゃいけないほど困ってないからな」


 本音を言葉にする。

 これがかなり効果的だったようだ。


 "嘘を信じさせるには、ほんの少しの真実を混ぜること"


 そんな言葉を残したのは誰だったか。

 有名なミステリー作家あたりだろうか?


 まぁ、これだけ必死になって慌てふためく馬鹿どもを見てると、この手段は案外使えるかもしれないな。



 そんなつもりはないが、本気で殺されると思ったんだろう。

 これから会うはずだった男の情報を必死な形相で話し始める。

 男の名前、容姿だけじゃなく、ありとあらゆる話を休まずに語り続けた。


 どうやらその男の魔法で馬車にいる者達を昏睡させたらしい。

 効果は5分にも満たないわずかな時間らしく、睡眠魔法を放って男は退避、迅速に事を済ませたこいつらは合流場所となる街道からしばらく歩いた林の奥で戦果を確認するつもりだった。


 残念ながら金銭は確認している時間もなく、高価なモノと言えば指輪くらいしかなかったんだと二人は必死に話した。

 こんなものをどこで売るつもりだったのかを訊ねてみると、思った通りそういった盗品を扱うブラックマーケットがあるらしい。

 大きい町ならどこでもあるが、デルプフェルトにはとても小さなものしかないので迷宮都市まで行くつもりだったと話を続けた。


 ……つまるところ、ディートリヒ達が向かった町にはダンジョンだけじゃなく、闇市とは言えないような危険で巨大な市場が確立されているようだ。


 いや、ダンジョンには魔導具を落とす魔物がごろごろいる。

 "岩石の小手"程度ではない秘法級のお宝がそういった場所に流れるんだろう。

 入手経路も販売も参加する人間も、その全てが非合法の危険な世界で。


 ラーラから知識だけは学んでいるが、そういった連中は反社会的組織ではなく、世界の敵と明確に認識されているらしい。

 当然、各国も躍起(やっき)になって捕縛、時には命ごと消そうとするも、撲滅には至っていないのが現実だ。


 まぁ、そんなもんなんだろうな。

 潰しても潰してもどこかから湧いてくる。


 結局、人間がいなくならないかぎりは、終わらないもぐら叩きなんだろうな。

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