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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第六章 僭称するもの
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清々しい目覚めが

 意識を失った子供を見ながら、さてどうしたもんかと俺は悩んでいた。


 見たところ軽装ですらない一般的なワンピースを着ている。

 走ってきた方向を考えれば街道から逃げてきたのか?

 乗合馬車が襲われ、必死にここまで逃げてきたのかもしれない。

 いや、真っ直ぐ進んでいたとは限らないか。


 しかし、10歳前後と思われる子供がここまで走ってくる理由も他には考えられない。


「まぁ、この馬鹿どもを締め上げればわかるか」

「……わ、わふぅ……」

「来たか、ふたりとも」

「ぱーぱ、とってもはやいの。

 ぶらんしぇ、すっごくがんばってた」

「このくらいの速度なら、ふたりもいずれ出せるようになるぞ」

「ほんと?」

「あぁ。

 でも今は無理しないように頑張ろうな」

「うんっ」

「ブランシェもありがとうな。

 しっかりと言うことを聞いてくれて嬉しいよ」

「わふっ」


 ふたりの頭をわしゃわしゃとなでながらどうするかを考えていたが、まずは転がってる馬鹿どもを縛るのが先だな。


 インベントリから縄を出してしっかりと縛り、所持品を調べる。

 いい物じゃないが、武装解除もしっかりとした上で武器を収納しておく。


「……こいつはまさか…………面倒な物を…………」


 ひとりのポケットから厄介な物を手にしてしまった。

 思わず舌打ちをしそうになるほどいらないものだ。

 このまま捨ててもいいんじゃないだろうかとも考えるが、それはそれで問題になるだろうな。


 どの道、こいつらを憲兵隊に引き渡す必要もある。

 遅かれ早かれこれも知られることになるか。


 ……なんだ?

 女難の相じゃなくて、本当にそういった星の下に俺は生まれてるのか?

 まったく、面倒事も大概にしてくれよ……と、こいつは……。


 ……なんだ、これは?

 年代モノの地図、か?


 いくつかの地形が描かれた紙に、単語が少し書かれている。

 目的地と思われる場所にバツ印が書かれたいかにもなモノ(・・・・・・・)だが……。


 まぁ、今はいいか。



 並べて寝かせた馬鹿ふたりの顔に水をかけた。


 早朝の湖から汲んだ、透明度の高い水だ。

 さぞかし清々しい目覚めができただろ。

 ついでに汚い顔も綺麗になったな。


「――ごはっごふっごふっ!」

「――げほっげほっ! ごほっ!」

「目が覚めたか、ゴロツキども。

 これでも手加減してやったんだから感謝しろ」

「――なに、いって……げほっ!」

「――ふざ……けんなっ」

「お前らに聞きたいことがいくつかある。

 だが、嫌なら何も答えなくてもいいぞ。

 面倒事はごめんだし、憲兵に任せるだけだ」


 元から今回の件は必要以上に首を突っ込む気がない。

 正直、問題事は避けるべきだし、これは憲兵に任すべき事案だ。

 それでも一応は聞くべきなんだろうから、マニュアル通りに動いてみるか。


「で?

 この子はなんだ?

 指輪はどこで手に入れた?

 なんだ、この古びた紙切れは?」

「…………けっ!」

「誰が答えるかよ、馬鹿が!」


 まぁ、そういう反応が返ってくると思ってたよ。


 俺は手頃な20センチほどの石を拾い上げた。

 硬さを連中にも理解できるようにわざと叩いてから上に放り投げる。

 剣を抜き放ち、軽く力を使って馬鹿どもにも見える速度で振るい、斬った石を手のひらに乗せた。

 味噌汁に入れられるほどの大きさになった石を地面にばらばらと落としながら、声色を極端に低くして鋭い視線で言葉にする。


「お前らがそこまで馬鹿だとは思ってないが、もし逃げようとしたり、この子達に指一本でも触れようとすればこうなるってことだけは肝に銘じておいた方がいい。

 この子達に手を出すやつにまで情けをかけるほど、俺は慈悲深くない。

 町まで連れ帰る手間を俺に考えさせないように、少しでも努力しろ」

「「――ひぃッ!」」

「もう一度、同じ質問をするぞ――」


 軽く威圧も込めて俺は優しく訊ねた。

 もっとも、優しいのは口調だけなんだが。


 俺の威圧にびびった馬鹿どもは、面白いように話し始めた。

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