表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第一章 はじまりは突然に
14/700

ステータス

 俺が話した内容はすべて仮定にすぎない。

 どうなるかは実戦で試してみなければ分からないだろう。

 実際にそんなことは不可能だった、ということも十分に考えられる。


 自分達が持つ常識と照らし合わせているのだろう。

 随分と時間をかけ、ようやく彼らも話し出した。


「……もーすごすぎて、なんも分かんねぇ……」

「……なんでしょう……私が知る常識の削られる音が聞こえます……」

「……どうしてこうも実力差があるのでしょうか……」

「……このままトーヤに訓練してもらえれば、Aも余裕じゃないだろうか……」


 意気消沈の4人だが、実戦経験は比較にならないほど俺よりも上だ。

 それに基礎修練を積んできている彼らは、応用的なものを学べばすぐにでも強くなれるのは目に見えている。

 話した内容が今後の成長に繋がれば、少しはお礼になるかもしれない。

 そう思って、俺は彼らに出し惜しむことはしなかった。


 4対1の訓練もそうだ。

 あれは何も戦い方を試したかっただけじゃない。

 彼らが必要以上に力を使いすぎていると伝えたかった。


 無駄なものを削ぎ落としていけば、今よりも遥かな高みへ行ける。

 それを俺は証明し、彼らに学んでもらいたかった。


 恐らくは簡単に理解できないだろう。

 俺だってそうだったし、それを学べるのかは彼ら次第になる。

 でも、これから先、何ヶ月かかろうとも、彼らなら体得できる。

 そう俺には思えたから、あえて力量差を見せつけるように示した。


 こんなこと、普通の奴には教えない方がいいに決まってる。

 魔法の常識のみならず、これらは世界の常識を崩壊させうる情報になる。

 彼らがそれを無闇に口外しないことは、これまでの時間で十分に理解していたし、人となりを含む人物像もしっかりと知ることができた。


 彼らは善人だ。

 それも馬鹿がつくほどのお人よしだ。

 俺が空人であるかは出会いの切欠にすぎない。


 だからこそ、俺は様々な知識を話した。

 たった1時間という短いものだったけど、きっと伝わったはずだ。

 そして言葉では伝えなかったが、学べるように力を見せ続けた。


 なるべく理解しやすく、丁寧に。

 彼らが笑って、冒険者を続けられるように。

 ほんの少しだけでもその手伝いができるように。


 彼らは研鑽を積み重ね、俺なんかに習わずとも自らの力でランクAに昇格する。

 俺は彼らの背中を軽く押しただけ。


 これまで話した内容をどうするかは彼ら次第だ。

 理解できず無駄に終わることだってあるが、彼らには当てはまらないだろう。


 彼らはきっと、今よりも遙かに高名な冒険者になれる。

 その姿を見た子供達が憧れ、彼らを目指すような存在に。


 そんな彼らの手伝いができただけで、素直に嬉しく思えるんだよな。



   *  *   



 辺りは徐々に暗闇に包まれる。

 夕食をご馳走になりながら、俺はこの世界に必要となる多くの知識を学んだ。

 常識だけじゃなく冒険者としての知識も、彼らは出し惜しまずに話してくれた。


 一通り話し終えると、フランツが思い出したように尋ねる。

 その言葉に、俺も細かく話していなかったことに気がついた。


「……そういや、トーヤのステータスってどんだけ高いんだ?」


 色々と優先するべきことがあったからだろうか。

 それとも俺に余裕を持つだけの心がなかったからか。

 もっと早く話しておけばよかったと思ったが、どうやらそれは一般的には良くないことのようだ。


「確かに僕も興味は尽きませんが、そういった話はタブーですよ、フランツさん」

「まぁ、いいじゃないか。トーヤに不利益になるようなことはできないんだし。

 14年も見て学び、研鑽を続けた男の技量ってのに俺も興味があるな」

「スキルも含めて話そうと思っていたことなので構いませんよ。

 でも伝え方が分からないので、書いてあるまま話しますね。

 何か盗賊戦で役に立つことがあるかもしれませんし」


 そう言って、俺は表示されてある通りに伝えた。



 ******* *******

 トーヤ・ヤガミ Lv.1

 HP15

 MP10

 攻撃3

 防御3

 魔力3

 技量15


 <スキル>

 剣術Ⅲ 体術Ⅲ 危険察知Ⅲ 魔力感知 MP自然回復 習得速度上昇

 鑑定 インベントリ 言語理解

 ******* *******



 ここまで話すと、俺は彼らに視線を戻した。

 どうやらその内容には、彼らを凍りつかせるのに十分なものが含まれていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ