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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第一章 はじまりは突然に
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魔法の対処法

「ですが、魔法を使われた際の対応策はどうしましょうか。

 我々であっても、その対処はかなり厳しいと言わざるをえませんよ?

 私の防御魔法にも限りがありますし、攻撃魔法を使う者が二人もいれば流石に抑えられないと思いますが……」

「俺とフランツならある程度は避けられると思うが、それも限界があるしなぁ」

「もしかしたら、俺が対処できるかもしれませんよ」


 いやそんな、『え?』って顔をされてもな。

 あくまでもまだ仮定の話をしてるんだが。


「そ、そんなこともできるのか、トーヤ」

「たぶん、としかまだ言えませんけど、エックハルトさんが魔法を3回も使ってくれたのでおおよそは掴みかけている、といったところでしょうかね」

「い、いやいやいや! お前さっきこの世界に来たばかりだろう!? そんな簡単に、それも今まで見たこともなかった魔法の対処なんてできるわけないだろ!?」

「できる、ではなくて、できるかもしれないっていう仮定の話ですけどね」

「い、いえ、それでも十分に凄いことだと僕には思えるんですが……」

「本当に、そんなことが可能なのですか?」

「試してもいいですか?」


 そう言葉にして、俺はエックハルトに先ほど使った魔法攻撃をお願いした。

 流石に今日はあと1回くらいしか魔法は撃てないと彼は答える。


 魔法とは、一日にそう何度も連発できるようなものではないらしい。

 使用回数はそれぞれが持つMPの量によって変わってくるが、これは睡眠を取らなければ回復しないという制限がかかる力だと彼は教えてくれた。

 それも1時間はしっかりと眠らなければならないようで、野営中は特に使用を控えつつ周囲を警戒しなければ身の危険に繋がってしまう。

 ようするに突発的な襲撃に対し、回復や攻撃がある程度できるだけのMPを常に温存しなければならない、ということだ。


 MPを回復をするには睡眠だけじゃなく、ポーションを使う手段もある。

 しかし専用の薬は非常に高価なので、そう滅多には使えないようだ。


 相当不便な制限だと思えるが、魔法の効果は絶大だ。

 たった一度行使するだけで、戦局を大きく変えうる力を秘めている。

 それが魔法と呼ばれるものらしい。


 先ほどの訓練でエックハルトが使った魔法は、威力を抑えたものだというのがはっきりと俺にも理解できたが、そのどれもに対処ができると思えるものだった。

 飛ばしてきた魔法の詳細を尋ねてみると、やはり威力を抑えてはいるが完成度は実戦で使っているものとそれほど変わらないらしい。


 一般的に他者が使う魔法との違いも聞いてみた。

 彼の使う魔法は長年修練を積み重ねたもので、冒険者崩れが使うものとは完成度が遙かに違うとディートリヒは話した。

 となれば、あと1回魔法をお願いするだけで十分理解してもらえるだろう。


「では、行きますよ」

「はい。お願いします」

「アイシクルランス!」


 彼はメイスを前に出し、こちらへ魔法を放つ。

 30センチほどの大きさで槍のような形状の氷塊が迫る。

 これまで見てきたものと同じなので、その対処法も頭に入っている。


 氷塊のある部分を見極め、鞘でその場所を強めに突く。

 すると、弾けたような甲高い音を上げながら、氷の槍は霧散した。


 どうやら推察通りらしい。

 これなら他の魔法にも通用するかもしれない。

 だが、この原理を言葉で教えたところで、鳩が豆鉄砲を食らったような面白い顔をし続ける彼らには理解できないと思えた。


 そんなことができるなら、この世界の常識として伝わってるはずだ。

 これも俺が空人として手に入れたスキルのお蔭なんだろうな。

 関係性があるものも所持しているみたいだし、これは有効に活用していこう。


 もっとも、手に入ったのはさっきの訓練中だ。

 恐らくは魔法の行使をこの目で見極めたことによるものかもしれない。

 つまり、戦闘や経験によってスキルを入手できる、ということにも繋がる。

 それがたとえ、この世界でも特別なユニークスキルであろうと、だ。



「それじゃあ今起きたこと、今起こしたことについて話しますね」


 凍りつく彼らに俺は話す。

 その言葉にようやく意識を向けてくれた。

 まずは前提から入る。


 俺は魔法が使えない。

 地球にもそんな技術と思われるものはなかった。

 そのうち使えるようになるかもしれないが、それはまた別の話だ。

 あくまでも今の攻撃は物理的なものだと念を押した。


 そして彼が出した氷塊には、ウィークポイントが存在する。

 それを見極め、そこに強い衝撃を与えるだけで魔法の維持ができなくなった。

 言葉にしてしまえばこんなものだ。


 だがこれは、そんな領域の話ではない。

 だからこそ彼らは首を傾げる。

 そんなこと可能なのか、と。


 そういった反応をされるのも理解していた。

 こんな対処など、もしかしたら俺にしかできないかもしれない。


 俺は、魔力の流れを読み取って、その弱い部分を突いたのだから。


「エックハルトさんが出した氷塊には、魔力の流れが弱い箇所があります。

 そこを強く突いたために破壊できた、ということなんですが、恐らくこれは俺にしかできない技術なのかもしれませんね。

 それからこれは、魔力を固体でぶつけるものに限ると思います。

 風や水、火のような直接的に掴めないものには効果がないはずです。

 原理は同じなので、魔力を込めた斬撃でも飛ばせば話は変わるでしょうけど」

「……まるで魔力を込めた斬撃を飛ばせれば相殺できるって聞こえるな……」


 ディートリヒは静かに呟いたが、実際には少し意味が違うだろう。

 正直なところ、魔力を込めた斬撃を放つ必要性も俺は感じない。

 飛ばすことができれば相手にも直接ダメージがある、という利点はあるが。


 ようするに、魔力の流れをコントロールする力を応用すればいいだけだ。

 火など掴めない魔法は、氷塊のように弱い部分を突くだけでは消えないだろう。

 恐らくは魔法を維持するのに必要な楔の役目をしている"流れ"があるはずだ。

 それを切り払うだけで状態を保てずに霧散すると俺は推察している。


 もしこの考えが正しければ、ほぼすべての魔法を近距離まで来た瞬間に攻撃を打ち込み、無効化することができるだろう。


 それを話すと4人は頭を抱えた。

 あまりにも常識外れなことを言っているのは俺でも理解できる。

 仮定の話である以上、そうはならないかもしれない。


 だが今見せたように氷塊を破壊するのではなく、霧散させたことが物語る。

 俺の持つスキルなら、魔法を完全に無効化させられるかもしれない、と。

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