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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第五章 誰がために
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いい加減にしろよ

 向こうには向こうの言い分があると知った上で、俺は強い苛立ちを募らせた。

 現状を理解するつもりがないなら話は別だ。


「……フラヴィの言葉も聞く耳もたずか。

 現状を知ってもなお威嚇してくるんだな。

 さすがにイラつくな、その態度がこうも続くと……。

 ……うちの子を、そのデカい図体で威嚇して怖がらせるなよ――」


 怒りに任せて威圧を強く放つ。

 やつよりも強力に、やつよりも明確な敵意を込めて。


 うちの子を威嚇してびびらせたんだ。

 覚悟はできてんだろうな。


 わからずやの犬っころ(・・・・)に低く重々しい声色で言葉にした。


「――いい加減に現状を悟れ。

 お前(・・)には取れる選択が少ないのも理解しているはずだ。

 正直なところ、俺にとってはどうでもいいことなんだよ。

 俺達の近くにお前が来たから様子を見に寄っただけだしな。

 どうするかはお前が選べばいいし、俺達に被害が出ないならどうでもいい。

 ……だが頭のいいお前なら、何が正しい道なのかはわかってるはずだ。

 それを選ぶか選ばないかもお前の自由だし、それでも言葉を返す気がないんなら俺達は日常に戻るだけだ。あとは勝手にすればいい」


 ……まだ話す気にならないのか?

 それともお前はそこまで石頭なのか?

 その理解できない自尊心ですべてを終わらせる気か?


「……いい加減にしろよ。

 その姿勢を崩さないつもりなら、俺達はもう戻るぞ?」


 しばらく時間を与えたが、やはりそう簡単に人は信じないってことか。

 なら、俺達には関係ないことと割り切って戻るだけだ。


 それでいいんだな、お前は。

 ……本当に、それで。


「…………そうか、わかった。

 あとは好きにすればいい。

 プライドに生きることも俺は否定はしない。

 ……この状況では理解なんてできないが……って、なんだ、フラヴィ?」

「きゅうきゅう! きゅう! きゅぅうぅ!」


 腕から乗り出すように、大狼へ何かを訴えているように見える。


 ……いや、そうか。

 そうだったんだな。

 フラヴィも気がついていたんだな。

 だからそんなにも必死になって、恐ろしい相手と話をしていたんだな。


「…………きゅう……きゅぅうぅうぅ…………」


 とても悲しげな声色が林に響く。

 しばらくの時間を挟み、ため息をつきながら俺は言葉にした。


「…………行こう、フラヴィ。

 どうやら頭が岩石のように固まってるらしい」

「……きゅぅぅ……」


 そんな泣きそうな声を出さなくていいんだ。

 フラヴィは精一杯頑張ったと俺にだって伝わったよ。


 本当に優しい子だな、フラヴィは。

 今回はダメだったけど、その気持ちはなくさないで欲しいよ。


 (きびす)を返そうと足に力を込めた瞬間、力強い女性の声が周囲に響いた。


「…………ヒトの子よ。

 強者と見込んで、頼みがある」


 その言葉に嬉しく思ったのは俺ではなく、フラヴィだった。

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