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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第四章 魔物の卵
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何ものにも勝る

 強くしがみつき、震えながらもしっかりと敵を見据えるフラヴィ。

 これだけ近づいても敵から目を逸らさないのは、とてもいい傾向だ。

 これなら攻撃できなくとも避けることはできると思える。


 生来この子の種族は臆病なんだ。

 なら、回避をすることくらいわけがない。


 動きは素早いと聞く。

 それがたとえ逃げ足だろうと関係ない。

 早く動けるという一点は、何ものにも勝る武器にすらなりえる。


 蝶のように舞い、蜂のように刺す。

 この子は速度を活かした戦い方ができるかもしれない。


 そんなことを考えながら、俺は振り下ろされた剣をかわす。


 正直、ひどい攻撃だ。

 型も何もあったもんじゃない。

 ただただ力任せに武器を振り回してる。


 そんな攻撃に当たってやるほど俺は間抜けじゃない。

 よけながら脚を強く払うと、面白いように身体を半回転させた。


 豪快に頭から地面へ落ちるゴブリン。

 これだけの衝撃を受けて剣を手放さないのは評価できるが、それも体が硬直しただけと思われるこいつにいいところはない、か。


 思わずため息がもれそうになったが、それを押さえこむ。

 時間差とも言えないような連携攻撃に体を軽く曲げて回避し、よけられたことに驚いている間抜け面を横から剣の腹で叩いた。


 ばちんと痛そうな音を響かせて転げる。

 その間に軽く走り、両手斧を持ちながらこちらに向かう相手に詰め寄った。


 他の2匹が立ち上がるまでそれなりに時間を稼げた。

 最悪、俺の位置を確認してから行動に移すことになるだろう。


 対応が遅すぎる。

 その間に何匹のゴブリンが倒せるのか。

 すべての行動が稚拙すぎて、(あら)しか見えてこないほどひどい。


 こんな程度じゃ、なりたて冒険者の訓練にすらならない気がする。

 逆にこれを基準として考えるような、勘違い冒険者を生み出すんじゃないか?

 そういった意味では危険な相手とも言えるんだが、こんなのを相手にするくらいなら先輩冒険者と模擬戦をした方が確実にいい経験になる。


 こういったところも、この世界の住人が弱い理由に繋がるんだろうか。

 正しい修練ができていないだけじゃなく、常識と言われることの中にも相違点があるのかもしれないな。



 両手斧を重々しく振り上げようとするゴブリンに、今度はため息がもれた。


 薪割じゃないんだ。

 そんな大振りが通用するわけないだろうが。


 その隙を見逃さず、心臓があると思われる場所に柄頭を叩き込む。

 地面を踏み締めている状態で当てれば、それなりのダメージになる。

 だがまさかそれだけの一撃で倒せるとは、さすがに思っていなかった。


 ゴブリンは想定していた以上に耐久力が低いらしい。

 圧倒せず、フラヴィに戦いの空気を体感させるつもりだったが、程度の低いゴブリン相手じゃあまりいい勉強にはならないかもしれないな。


 俺の胸に強く抱きつき、震えながらもしっかりと敵を見据えるフラヴィ。

 戦えるようになった時点で、この子はゴブリン程度を軽く超える強さを持つ気がした。

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