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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第四章 魔物の卵
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丁度いい

 今もなお震える子の向きをゴブリンが見えるように変え、俺は言葉をかける。


「フラヴィ。

 これからゴブリンと戦う。

 フラヴィは震えたままでいいんだ。

 でも、敵から目を離しちゃいけない。

 目を離した瞬間に敵は襲ってくる。

 怖くても、少しだけ頑張ろうな」


 フラヴィをひとなでしたあと左腕で抱え、剣を抜き放つ。

 さて、どうするのがいちばんこの子のためになるのか。


 今度は前回と同じ戦い方ではダメだ。

 あの速度はこの子に負担がかかるし、何よりも戦いを学ばせたい。

 それがフラヴィにどんな影響を与えるのかはわからないが、少なくとも勇気を持って戦うことの必要性だけは伝わると信じたい。

 なすがまま倒されることなんて、絶対にさせたくない。


 まぁ、そんなことを俺が黙って見てるわけもないんだが。



 わざと草を踏み締める音を出しながら、俺はゴブリンどもに近づく。

 距離30メートルといったところで、ようやくこちらを視認したようだ。


 やはりこいつらは眼も耳も相当悪い。

 当然気配を察することもできないようだ。

 その点においてはフラヴィの方が遙かに優秀か。

 思考も子供なみだと言われるくらいだし、武器も満足に扱えないような技術の相手で、冒険者のあいだでは刃物を持った猿の方が強いんじゃないかと酒を飲みながら話に花が咲くほどの連中だ。


 だが、練習相手には丁度いい。

 人型ということも都合がいいと思える。


 グギャグギャと何かを話しているようだが、武器をこちらに向けて威嚇した。


 獲物はボロボロの棍棒と錆びた片手剣、それに刃が欠けた両手斧か。

 あんな重い物を武器に選んでいる時点で馬鹿丸出しなんだが、それならそれで移動阻害をすれば安全に他の2匹を倒せるな。

 今回は目的も違うし、なるべく倒さないように戦うか。


 剣を地面に刺し、インベントリから石を取り出して斧を持っているやつの右太ももに当てて転ばせた。

 そこそこ強めに投げたが、あの程度じゃ大きな怪我を負うことはない。

 かなり痛いとは思うが、それくらいだろうな。


 まぁ、これでこちらに来るまでの時間を少し稼げたな。

 せいぜい自分に合わない武器を持って体力を使うといいさ。


 仲間に攻撃を当てたことに怒っているのか、他の2匹は俺に向けて威嚇する。

 走る速度を若干上げてこちらに迫ろうとするが、それも悪手だ。

 距離を取るのも良くないが、ここは倒れた仲間をサポートするべきだろう。


 俺なら物陰に隠れながら様子を見つつ、好機をうかがう。

 飛び道具を使う敵がいるなら、無策に突っ込むような行動はしない。


「……所詮はゴブリンか……」


 猪のように武器を掲げて直線を進む2匹に落胆の色を浮かべた。

 こんな戦い方をすれば命がいくらあっても足りない。


 戦略も何もあったもんじゃないな。

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