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天気予報

雨が降っていた。


ざあざあと雪崩のような雨は耐える様子なく。


僕は走っていた。


学生カバンを頭の上に乗せ、走っていた。


おかしな話だ。だって身体や服が汚れても洗えるのに、洗えないカバンや教科書をかさ代わりにしているのだから。


滝のような雨が地面を打つ音がより一層強まっていく...





目が覚めると朝の7時だった。


夢か...重い体を起こし、洗面所に向かう。


やけに鮮明で、普段は夢なんてすぐ忘れてしまうのにくっきりと覚えている。


リビングに向かうと母が朝食を作ってくれ、食パンにかぶりついた。


「交番が襲撃される事件が多発しており、警察は―」


ニュースを見ていると天気の予報に切り替わった。夢とは裏腹に今日は晴れのようだ。





軽く身支度を整え、教科書を詰め込むと、玄関に向かった。


ふと傘置きに目が行く。


しばらく雨は降っておらず、傘はその影を潜めてたたずんでいた。


雨は降らない。夢より科学的な天気予報を信じる僕にしては珍しく傘を手に取って学校に向かった。







授業は相も変わらずいつも通りだった。


僕は決して勉強ができないわけではないが、ときどき意味を見失う。


半円に長方形をくっつけたような数学教師が教室を出て今日の授業が終わった。





窓の外を見ると豪雨だった。




普段なら憂鬱になる雨でも今日は少し気分が上がった。


「あー傘持ってきてねえよー」


そんな声が聞こえる中教室を飛び出した。


早く出てきたせいか、昇降口は閑散としていた。


靴をとって外に出ると、屋根の下で外を眺める女子がいた。


志賀かなただ。たいして話したことはないがクラスメイトである。


小さく華奢な身体とは裏腹に大きな目をした彼女は、傘がなくて困っているようだった。


「これ使ってよ」


傘を押し込むように渡すとカバンを頭の上にのせて走りだした。


戸惑った表情をみせるかなたをよそ目に豪雨の中を走る。


偶然だなんて思わなかった。直感的にこれは今後も起きる。そう思った。


教科書をかさ代わりにするなんて馬鹿みたいだなんて思いながら、やっぱりカバンを頭の上に置いた。





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