第九十八話〜神州合邦〜
次に向かったのは河内国、かつて隼人が治めていた地域である。現在では彼等は郡司に収まり、中央からの国司の下で穏やかに暮らしている。大陸ほどではないが広々と草原が広がり、大きな道だけがこれを割って進んでいる。
国府は朝廷から定められた形式を遵守しており、聖武天皇はこの形を手本として各地に徹底させる方針であった。尤も、木材の不足や気候上の制約で採用がならなかった地域も多いが。
かつての族長、都火羅汰は河内介として任用されており、河内守と共に行幸を出迎えてくれた。晩餐では、天然の良港が近いことから多数の魚介類が所狭しと並べられ、その存在価値を知らしめることに成功した。
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次の日には山背国へ向かった。元々は蝦夷の勢力圏であったが、今ではその好戦的な性格はすっかり鳴りを潜めている。
全体的に山がちなその国土は山菜や茸の類が実に豊かに育まれている。猪や鹿なども多く生息し、現地人の良き食糧供給源である。国府はその山の奥に存在する決して広くはない平地に置かれていて、旧族長館がこれにあてられている。
こちらの晩餐では山の珍味が惜しげもなく放出され、陪従の中にはひどく気に入った者もいるらしい。伝統的な踊りや歌も共に供され、晩餐と言うよりは宴に近い様相を呈した。
次の目的地は、大興府である。




