表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/106

第八十七話〜唯一の王たる海の泡〜

 ……皇帝視点


 そこは全く白い、或いは何も無い空間であった。

 冥界(Ukhu pacha)にいるはずの死神(Supay)の姿も見えず、まるで死んでなどいないようである。


「残念だが、お前は死んだ」


 突然の声に振り返ると、其処には眩く輝く何か(・・)がいた。


「全く、態々私の名を冠しておきながら何たる体たらくか。息子共々国を放ったらかし、剰え異民族の侵入を許すなど……」


 悲しいかな、事実である。目の前の存在が言っているのは恐らく私への非難であり、客観的に見ればそう評価されるのだろう。私にも心当たりがある以上真と言わざるを得ず、ひいてはその少し手前の発言も真実であるはずだ。ならば……


「ああ、お前が考えている通り、私は創造神(Viracocha)である。お前にある通達をする為に、死んだお前をここに呼んだ」


 やはり、我等の神話における最高神、ビラコチャ神であった。だが、伝えることとは何なのか。


「お前は、私の名に泥を塗った。よって創造神としての権能を以てお前を蘇らせ、別の世界(Pacha)へ送る。名に恥じぬ働きをせよ」


 傍迷惑な話とも思ったが、改めて考えれば全て自分の成した結果である。それにビラコチャ神がお怒りであるなら、抵抗しても不利益を被るだけである。従う他に無い。


「ふむ、存外大人しくて結構。ここで駄々をこねられたらどうしようかと考えていたが、要らぬ心配だったな。さあ、新天地で最善を尽くせ……」


 ビラコチャ神が手を一振りすると、急に私の意識が遠のいてきた。

 これはつまり、ビラコチャ神への償いの人生を与えられたのだ。どんなに面倒だと思っても、完遂せねば未来は無いのだろう。


 そんなことが頭を巡る中、そのまま意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ