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第七十六話〜新世界発見〜

 広徳三年、治天紀元十八年の皐月。

 当初の予定通りに治天宮は完成し、聖武天皇や皇后壱与、東宮基親王やその他親王内親王は皆旧菅原邸から新内裏に居を移した。造営の終了を迎えて菅原道真に与えられた事実上の更迭処分も解除され、造宮卿の官職廃止も相俟って大納言に任ぜられることとなった。ここに国家の首府、(みやこ)としての治天京はその威容を八紘に示した。


 此度王化された西陸道南方の地は「南洋道(なんようどう)」と命名され、かつて王都であった阿免には代わりに「鎬京府(こうけいふ)」が設置された。鎬京帥以下、その役人は他の道府に準ずるものである。

 直接的に行政区画へ関わるものではないが、各道を構成する陸地に対しても、公称が定められた。結局のところこれらも超巨大な島であるので、西川道と西陸道を合わせた陸地を「大西洲(おおいにしのしま)」とし、東洋道は巨島と周囲の群島を合わせて「大海洲(おおいうみのしま)」と呼び、南洋道は単体で「大南洲(おおいみなみのしま)」とされた。これら三洲はあくまでも地理的な呼称であり、行政上の区分ではない。また大海洲が位置する海を「東方洋(あずまのうみ)」と、大西洲と大南洲の西にある海を「西方洋(にしのうみ)」と呼ぶことにした。現状、これが世界の最東端と最西端である。


 行政区画の変更は、治天京のある大和国で行われた。西に位置する河内国と東の山背国を一つにまとめ、大和国単体で畿内を構成し、島一つを領ることとしたのである。この島の地理的呼称として「京島(みやこのしま)」が採用された。従来の河内守と山背守は嘗ての現地族長であったので、夫々郡司として現地を引き続き統治する。

 南洋道の編入によって、また新たな妖術体系が取り入れられた。これを以て陰陽尹はこれら一切の妖術──自らが使うものから新しく入った体系まで──を纏めて「陰陽術」とし、諸体系の整理統合と命名を陰陽台の新方針とした。例えば、従来の転移陣は「転門」と称されることになる。他にも様々な式符を保有しているが、それらも皆新たな術体系の中に組み込んで整理する。序でに陰陽台の下部組織として「研技院(わざみがくつかさ)」を設置し、中央での技術開発の促進を図る。


 こうして現在知られている範囲は全て律令の制度下に組み入れられ、王化の恩恵が遍く八方を掩うこととなった。これを記念して、大興府の側を通る河の河口付近の程良い土地に離宮造営を指示し、また東大神宮での大神像建立を発願した。この大神像は坐像で、銅製鋳造塗金の大坐像である。それに伴って、東大神宮に坐像を安置する奉像殿を造るよう命じた。


 許昌帥が内裏に飛び込んで来たのは、朝廷のみならず世界が歓喜に沸いていたこの時であった。


 …………


「許昌帥より陛下にご報告を申し上げます。内容の重大性を鑑み、直奏の形となったことをお許し下さい」


「許そう。疾う申せ」


「はっ。『湾より来た者』からの報告で、西方洋より西に陸地を発見致しました。海岸線は見渡す限り何処までも続いており、恐らく洲級の陸地と思われます」


「なんと。化外の地がまだあったとは……」


 端っこだと考えていた海の向こうに、まだ見ぬ陸があったと言う。しかもそれは島などではなく、高い確率で洲なのだと。


「ふむ…………押領使、いるか」


「こちらに侍しております、陛下」


「陰陽尹と協力して開拓使節を組織し、かの新世界へ上陸せよ。上陸の後は確実な拠点を作り、現地の豪族と接触、出来るだけ穏当に王化せよ」


「承りました。直ちに構成員を抽出致します」


 広徳三年皐月廿日。対新世界遠征が始まろうとしていた。

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