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第六十話〜終結〜

 三条大路と東二坊大路の交点、菅原道真邸。

 太政大臣として相応しくあるべく宮域に近い所に構えられた四町歩(約四陌)の広大な屋敷は、現在、聖武天皇還幸の中継地兼行宮となっていた。そして現在、その母屋に茵を敷き御簾で囲んだ一角を臨時の座所としていた。


「……それで、結局全て灰になったのだな」


「申し訳ありません。この道真が不甲斐無き故の大失態で御座います」


「宝物その他は免れたから良いし、燃えたものは造り直せば済む話だが……卿は留守官に任じていたから、相応の罰があろうな。こればかりは律に従う他あるまい。とは言え卿にはやってもらう事が山程ある。さて……」


 悩ましい問題である。遥か昔、諸葛亮は部下の馬謖を泣く泣く斬ったと言うが、同じく太政大臣をなんらかの形で「斬る」必要がある。


「…………よし。菅原道真、卿の位階を正一位から正三位に下し、太政大臣の任を解く。代わりに卿を令外官である造宮卿(ぞうぐうのかみ)に任ずる。正式な除目は追って行うが、先立って以上の如く処分する」


 正一位から下がったとは言え、正三位である。何が変わったのかと思うだろうが、禄令によれば、公家としての禄は半分以下になる。その上太政官の頂点から令外官に格下げ──しかも造宮卿は従四位下相当である──となれば、体面を保つには厳しかろう。


「……寛大な思召し、恐悦至極で御座います」


「うむ。ところで、放火犯は捕らえたのかね」


「その件についてなのですが……おい、あれを此方に」


 道真が舎人に指示を出し、円筒形の木箱を持って来させた。


「……向こうでも見た気がするな。一応聞こう、これは何だ」


「発見した兵曰く、放火犯の親玉、則ち敵の王の首との事で御座います。臣も確認しましたが、間違いありませぬ」


「何故首だけだ」


「その辺りは未だ報告を受けておりませぬ故、後ほど弾正台から奏上があるかと」


 後で聞いた所によれば、衛士から大刀を奪った者が首を刎ねたとの目撃情報があったらしい。しかし真偽は不明の為、勅裁を経ずに殺された件は不問とし、無名の王として塚に葬る事とした。

 完全な王化は後日に後回しにする。西方も平定したので、同時に行うのが良かろう。


 ……首長視点


 彼は、またしても死んだ。

 民にまた見放され、部下にまた見捨てられ、弟にまた殺された。


「一度ならず二度までも」農耕神はそう彼に絶望し。

「汝学ぶ事なくまた堕ちる」冥界神はそう彼に失望し。

「転生して尚贖罪成らず」生殖神はそう彼に叱責し。

「清まるまで安寧は無し」戦闘神はそう彼に明言し。



 そして彼は、同じ道を辿る事になった。

さて、本話で第五帖の本編は終わりです。年を越して次回は閑話、そして第六帖へ進みます。



女帝武則天、賢王ビルガメシュと来て愚王ハカウです。誰やねんと言う方の為に、ハカウについて補足をば。

時は十五世紀頃の古代ハワイ。ピリ王朝第十二代のリロア王は偉大な王でありましたが、その息子であるハカウは無能でした。そしてリロア王が外遊した時に作った落胤がウミであります。

ウミがリロア王を訪ねた際、王は彼を直ぐに認識しましたがハカウは認めませんでした(まあ何処の馬の骨とも知れぬ奴が弟になりますからね)。そこで王は「次代はハカウに、ウミは家臣」と宣言して丸く収めます。やったね。

その後王は亡くなり、宣言通りハカウが即位しました。ハカウ王はウミを虐め抜き、王室から追い出します。キレたウミは自分の友人や、ハカウがやはり追い出した元家臣などを集めて罠を仕掛け、遂にハカウを殺しました。元々ハカウ王を良く思わなかった民衆はウミを歓迎し、ここに英雄ウミ王が誕生するのです。


トゥイタトゥイ、アホエイトゥは何れも古代トンガ王国の人物です。お暇であればお調べ下さい。この紙幅は狭いのです()


本年最後の投稿はこれで終わりですが、来年もどうぞお付き合い願いたく存じます。正式なご挨拶はまた後日。

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