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第五十九話〜結末〜

 ……太政大臣視点


『……内裏炎上、とな。被害はどうか』


「未だ鎮火の目処が立っていないので現状の被害となりますが、既に敷地の六割が失われました。幸い、陰陽頭の結界によって火は宮の築地塀内で収まっていますが、燃え広がり方を考慮すると全滅も……」


『焼ければまた造ればよかろう。して、壱与と我が子らは無事だな』


「当然で御座います、陛下。我等の式や陰陽頭の式神を総動員して、皇后殿下や親王殿下、内親王殿下のみならず殆どの宝物と書物を救い出せました」


『ならば良い。では、放火の張本人はどうした』


「申し訳御座いません、混乱に乗じて逃げられました。京兆の兵に追わせておりますが、場合によっては既に逃げおおせたやも知れませぬ」


『急ぎ捕らえ、朕が前へ献じよ。朕も直ぐに戻る』


「承りました」


 通話が切れた。陛下は寛大な判断を下されたが、それに甘んじる訳にはいかない。


「陰陽頭、鎮火作業はどうか」


「流石は妖術混じりの火です。この分だといっそ燃えるに任せた方が宜しいかと。常人には消し難いものですし、私一人ではどうにもなりませぬ」


「ぐぬぅ……」


 私の心配と苦悩をよそに、火柱は天高く立っていた。嘗ては神聖不可侵であった、内裏の瓦礫を薪として。


 ……首長視点


 アホエイクの手引きにより、あの都市から逃げ出せた。此奴は難なく操っていたが、豚とも違うこの四足歩行の動物は「ウマ」と言うらしい。何と早いことか。それはさておき、追っ手が来ないのを確認して休憩をとる。しかし、すっかり日も暮れた。松明に火を付ける。


「我が王、何とか無事に逃げられましたな」


「一時はどうなるかと思ったが。しかし、奴等のあの慌てぶりよ」


「思い出話は後に致しましょう。幸い、近くに漁村がありますので、そこで手頃な船を一隻……」


 その刹那、彼の胴と首は離別した。そして光る塵となって消え去ってしまった。


「……流石良い切れ味。鮫の(Lei)首飾り(Oʻ Mano)より良いや」


 そう呟きつつ、血糊の残る武器を持って出て来る影一人。


「……だ、誰だ、貴様!」


 その影は、体をこちらへ向けたように見える。火を向けると、その顔がくっきりと浮かび上がった。


「やあ、随分と久しぶりだ。ねぇ、()()()()()()


 兄、兄、兄だと! この私を兄呼ばわりする不敬者なぞこの世に一人しか…………


「……まさか」


「この顔を忘れるはずが無いよね。何てったって、兄さんを殺した張本人、弟たる僕の顔だもの」


 嗚呼、そうか、我が弟ウミよ! 偉大な先王にして父、リロア王の汚らわしき落胤よ! 私を死に追いやった、史上最悪の禁忌破りよ!


「貴様、何故此処に……」


「逃亡したクイカクイの手下の話は聞いているはずだよね。あの辺り一帯を統べていたのだから。僕はその人に、ある種の抑止力として召喚されたんだ」


「クイカクイ……彼奴め……」


「でも、その役目も此処で終わり。この力は、今この為にあった。この武器は此処の戦士から失敬した。兄さんがやって来るまで、あの都市の近くで息を潜めて待ってたのさ。……さあ、兄さん。時間だよ」


 ウミがその武器を構え、剣呑な空気を出す。その顔はいつか見た目。何年も前の、私を殺した時の目。二度と見たくなかった、残忍な目。

 嗚呼、糞。こうならないように動いた筈なのに。生前を教訓に、徹底的に危険因子は排除した筈なのに。何故だ、何故だ、何故だ!


「ま、まて! 話せば分かる! 貴様が望む物は王位でも何でもくれてやろう! だから……」


「兄さん。今の兄さんも、変わらずとても残念だよ」ウミは心底残念そうに、そして事実そう言い残し……



 一閃。



 最期に見たのは、我が体だった。






……ふう。

今まで雰囲気を尊重して隠れていました。一条です。

さて、次回でこの帖の本編が最後。閑話を投稿すると、切りよく年を越すかと存じます。詳しい予定は未定ですが、松の内の更新どうしましょうかねぇ……

ではまた次回。評価や感想、レビューに誤字報告は下部よりどうぞ。

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