第五十話〜結果〜
……王の視点
「ええと、東に行ったは良いけれど撃退されて……」
「……やめろ」
「ウルクで虚しくも狙撃されて……」
「……やめてくれ」
「頼みの綱のネロは肉壁でしか無くて……」
「……後生だから……」
「で、フラグを無事に回収したのね。お疲れさま」
「なぜ我は死して尚こんな辱めを受けねばならんのだ! 諦めてお前の姉を出せ!」
「蛮族とやらに負けといてそりゃ無いわよ。あんたこそ諦めなさい」
あのクソッタレな世界に来る前の、あの何も無い世界に、なぜか我はいる。
「あの負けっぷりは流石ね。スカッとしたわ」
「喧しい。だからさっさと姉をだな……」
「それなんだけどね、あんたにはも一回転生してもらうわ」
我の耳はおかしくなったらしい。
「…………いくら神でも嘘は重罪だぞ」
「重々承知。大体、負けといて贖罪が終わるわけないじゃない。ほら、さっさといってらっしゃいな」
「断じて断る! こんな理不尽、認められるか!」
「うっさい! とっとと飛びなさい! あんたの親友が向こうで待ってるわよ!」
前回と同じく、床に穴が開く。その上に立っているのは我であるから、必然的に我は落下するのである。
「おのれイシュタルもう一度覚えておれよぉぉぉ……」
……聖武天皇視点
押領使からの征討完了の報を受け、唐土の時と同じように転移陣で敵の旧王都へと行幸。王座にて押領使と東宮を迎え入れた。
「ふむ、中々良い場所ではないか。そう思わんか、押領使よ」
「主上が斯様に思されるなら、恐らくそうなのでしょう。ところで、殿下は何処へ行かれましたのでしょうか」
「別室で休んでおる。押領使、副将軍として代わりに報告せよ」
「では不肖この義経、征討の顛末を敷奏致します」
…………
「……そして自身を〈ビルガメシュ〉と名乗った敵の王と正面からぶつかり、臣等が圧勝。船を以て五日で此処へと舞い戻り、陛下に戦勝を敷奏した次第であります」
「ふむ、概要は理解した。して、敵将の狙撃は如何にしたか」
「陰陽頭殿から頂いた霊札を用いました。頭より試験目的で渡されましたが、実用に耐える代物でありました」
「ほう、朕は初めて聞いたぞ。まあいい、では話にあった敵の首は何処か」
「はっ、此方に。現地にて塩漬けと致しました」
そう言って差し出されたのは、直径一尺(約卅糎)高さ二尺(約六十糎)の円柱である。この中に首が入っているのであろう。
「大きく形は崩れていないと思われますが……ご覧になりますか」
「いや、いい。本土にて、阿弖流為と共に供養せよ」
阿弖流為を斬刑に処した後、都から離れた場所に供養塚を設けてある。今回も其処に供養される予定だ。
「承りました。して、此処一帯の統治は如何なされるので」
「そうさな、追って判断する。それまでは卿が統治せよ」
「はっ、仰せのままに」
唐土以西の征討は、こうして恙無く幕を閉じた。時に源闢十六年、正月六日の事であった。
此処まで御拝読頂き有難う御座います。
評価感想その他諸々、いつでもどうぞ。
さて、次回は閑話を挿入します。
その後に新章が入りますが、時系列としては本章と同じ物となります。ご期待下さい。
それはさておき、遂に五十話ですよ五十話。此処まで辿り着けたのも一重に読者の皆々様の応援あってこそ。深く御礼申し上げます。これからも何卒この勝満異世界流離奇譚を宜しくお願い申し上げます。




