第卅九話〜かんハピ♪〜
……報連相は大事
「八咫烏! 八咫烏は何処ですか!」
「おや、天照様ではありませんか。何か御座いましたか」
怒り狂った形相で殴り込んできた皇祖神と、きょとんとして尋ねる太陽を象徴する三本足の烏。
「何かではありません! 天帝殿への連絡はどうしましたか! 事前連絡が無かったと詰られてるんですよこっちは!」
詰問され、記憶を掘り起こす八咫烏。鳥頭に期待するのが間違いだったかと天照が思い始めた頃である。何かを思い出したのであろうか、八咫烏が声を上げた。
「………………あっ」
「焼き鳥にしますよ」
「お待ち下さい! これには深い訳が!」
「ほう、聞かせてもらいましょう」
「じ、実はですね……」
「実は、何ですか」
「……あの時は呑んでましt痛い痛い痛い頭握らn潰れるゥ!」
「全く、この馬鹿者が! 金星神にはしっかりと伝えること! 分かりましたね!」
「分かりました分かりましたから早く頭を離しtギニャァァァァァァ!」
以上、神々の楽しい日常の一幕である。
……これでも父親である
信楽宮、大極殿。
高御座にましますは聖武天皇、下方にて頭を垂れるは太政大臣。
「陛下、唐土より報告が御座います」
「うむ、聞こう」
「では、申し上げます。北方において、鉄や銅を始めとする各種鉱物の産出が確認されています。元々武照めが用いていたものですので、そのまま引き継ぎがされました」
「銅が安定して出てくるのは良いな。銭の普及に繋がる。鋳造の方はどうか」
「陛下の思し召しの通り、唐土にて銭貨の使用が根付いております故、それを基盤にして新たな銭を試作しております。また、冒頓の率いる者達を主とした西方との貿易路も確保されました」
「そうか。益々国が栄えるな」
「仰る通りです。……さて、最後は宮中からの報告です」
「そうだ、それを待っていたのだ。疾う申せ」
「……親王殿下は悪き事なく、元気に且つ順調に成長しているとの事です」
「流石、清らなる朕が息子! よし今から様子を見に」
「まだ執務は残っておりますよ陛下。殿下可愛さに国を傾けられては困ります」
「…………分かっておるわ」
「執務が終わったら問題御座いませんから、どうか今はお仕事を……」
今日も内裏は平和である。
……晴明、南へ行く
「御使様、此方が件の田畑に御座います」
「おお、これですか。……成る程、土地も肥沃で、用水路も完備。正に理想的ですね」
周の南部、曹操が治めていた土地に、陰陽頭は派遣された。目的は、南部の農作状況と取れ高の見積もり。可能なら田を増やせる場所の選定。以上三つである。
「ふむ、あっちは土地が余っているようですが……」
「ああ、あちらも良い土地では御座いますが、従来でも手一杯なのでこれ以上は増やせんのです」
「そうですか、そうですか……分かりました。これで目的は果たせましたかね……」
陰陽頭が帰ろうとしたその時、農民から声が掛かった。
「御使様、小腹も空く頃合いだろうと思いましたので、我等で簡単な食事を作って参りました。どうぞ御賞味下さい」
そう言って差し出されたのは、未だ盛んに湯気を立てる白く楕円形の物。陰陽頭も見た事があるものであった。
「ほう、餅ですか。では早速……むぐむぐ、うむ、これはむぐむぐ中々にむぐ美味ですねむぐ。米の甘さ美味さがむぐむぐ良く伝わってきますむぐ。……ふう、ご馳走様でした」
「お粗末様で御座います。他にも漁村の者が干物を持って参りました。此方もどうぞ」
「おや、本土では見ない魚ですね。折角ですから此処で、火に炙って頂くとしましょう」
今日の唐土も平和である。
此処までお読み頂き有難う御座います。
評価感想その他諸々、お待ちしております。
さて、次回からは第四帖です。お楽しみに。




