こちょこちょ姫
こちょこちょ姫
あるところに、こちょこちょ姫というなまえの女の子がいました。こちょこちょと、くすぐるのが、だいすきなお姫さまです。
「今日もいっぱい、こちょこちょしちゃおう」
こちょこちょ姫は、王さまであるお父さんに近づきました。そして、そーーっと、王さまのうしろから
「こちょこちょこちょーーー!!!」
「はあっはっはっは」
王さまは、たまらずに大きなこえで笑ってしまいました。びっくしりたのは、大臣たちです。
王さまは、大臣たちとかいぎ中でした。王さまはちょっとこまった顔をしていいました。
「こちょこちょ姫や、ここにいてはだめだよ。お妃のところへ行きなさい」
こちょこちょ姫はお妃さまであるお母さんのところへ行きました。お妃さまは、お城のおにわにいました。そしてそーーっと、お妃さまの後ろから
「こちょこちょこちょーーー!!!」
「おーほほほほ」
お妃さまは、たまらずにきれいなこえで笑ってしまいました。とたんに、頭の上からお花がふってきました。
お妃さまは、お庭でお花をつんでいたところでしたわらったひょうしに、お花をほうりなげてしまったのです。お妃さまは、ちょっとかなしそうな顔をして言いました。
「こちょこちょ姫。ここにいてはいけませんよ。お城のそとへ行ったらどうかしら」
こちょこちょ姫はお城のそとにいきました。お城のそとには、りんご畑がありました。そこではりんごの木に、はしごをかけて、りんごの実をとっている人がいました。
こちょこちょ姫もはしごをのぼり、そーーっと、りんごの実をとっている人の後ろから
「こちょこちょこちょーーー!!!」
「ふぁふぁふぁ」
りんごをとっている人は、たまらずにやさしそうなこえで笑ってしまいました。とたんに、ゴロンゴロンゴロン!
りんごをとっている人とこちょこちょ姫は、ふたりともはしごから落ちてしまいました。
「あいたたた」
こちょこちょ姫も、りんごをとっている人も頭をぶってしまいました。
りんごをとっている人は、いたそうな顔をして言いました。
「こちょこちょ姫。ここにいないでください。他のところへいったらどうですか」
こちょこちょ姫はあたまをなでながら、しばらく歩きました。なんだかおいしそうなパンのにおいがします。パン屋さんです。
こちょこちょ姫は中に入ると、おいしそうなパンがたくさんならんでいます。そしてパン屋さんの奥には、白いエプロンと白いぼうしをかぶった男の人がいました。こちょこちょ姫は、そーーっと、パン屋さんの後ろから
「こちょこちょこちょーーー!!!」
「がはははは」
パン屋さんは、たまらずにちからつよいこえで笑ってしまいました。とたんに、あたりいちめんまっしろになりました。
パン屋さんは、パンをつくっているところでした。パンをつくるこむぎこをばらまいてしまったのです。パン屋さんは、おこった顔をして言いました。
「こちょこちょ姫。なんてことをしてくれたんですか。もう、うちにはこないでください」
こちょこちょ姫は、おこられて、しょんぼりしてしまいました。こしょこしょするのが、わるいことだとわかったからです。あたまもいたいし、おこられてかなしいきもちにもなりました。
とぼとぼと歩いていると、いつのまにか大きなみずうみのところまできてしまいました。
そこには、こちょこちょ姫と同じくらいのとしの女の子がいました。こちょこちょ姫は、女の子のうしろからそーーっと近づいて
「どうしてないているの?」
と声をかけました。
えーーんってないていた女の子は、びっくりしてしまいました。
「おかあさんにしかられたの。えーーん、っていっぱいないたら、なきやみかたをわすれちゃったの」
女の子は、またえーーんとおおきな声でなきはじめました。こちょこちょ姫が、女の子のせなかをぽんぽんしても、あたまをなでなでしても、ぜんぜんなきやみません。女の子も、こちょこちょ姫はこまってしまいました。
そうだ!
こちょこちょ姫は女の子のわきを
「こちょこちょこちょーーー!!!」
「うふふふふ」
女の子はたまらずに、かわいらしい声でわらいました。
「ほら、わらっているほうがずっといいよ」
女の子はにっこりわらいました。でも、すぐにしんぱいしたかおになりました。
「こちょこちょ姫がいなくなったら、わらえなくなるわ」
こちょこちょ姫は、ちょっとかんがえました。
そうだ!
「ひとりのときは、こうすればいいんだよ」
こちょこちょ姫は、じぶんのわきを
「こちょこちょこちょーーー!!!
きゃきゃきゃきゃきゃ!」
女の子もじぶんのわきをくすぐりました。
「うふふふふ」
「きゃきゃきゃきゃきゃ」
女の子と、こちょこちょ姫のわらいごえがかさなりました。
こちょこちょ姫はこちょこちょは楽しいなあとおもいました。