第6節 材料の入手 (1)
すでに皆様は『たまごかけごはん』を食したことであろう。
前節であれだけ丁寧に説明したのに、「いや、まだ」とか言い出したら、さすがに温厚な筆者でもブチ切れちゃうよ。
後に残されたのは、実際に『たまごかけごはん』を作ってみることだけである。
詳細な作り方は次節に譲るとして、本節では『たまごかけごはん』を作るための「材料の入手」について論じたい。
『たまごかけごはん』に必要な材料は「生卵」、「醤油」、『ごはん』のたった3つである(第2節の『たまごかけごはん』の定義参照)。
自明のことではあるが、どんな凄腕の料理人であっても、材料がなければ始まらない。
『たまごかけごはん』も同様。食材の調達は必須である。
これに関して一番簡単な方法は「他者から購入」することだ。
だが、手作りにこだわるのであれば、出来るだけ他者のチカラを借りずに済ませたいものである。
パソコンの例で考えよう。
「どこのパソコン使ってるの?」との問いに「自作だよ」とドヤ顔で答えて、スーパーハカー気取りの輩がいるが、出来合いパーツの配線を繋ぐだけの、昔のガンプラ作りより簡単な作業の、なにをもって自作とか言えるのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
『たまごかけごはん』も同様である。他者が作った材料をかけてまぜるだけで、手作り『たまごかけごはん』と呼んで良いのだろうか。
それなら、エセ主婦がスーパーで買ってきた惣菜を皿に移してチンしただけのものだって立派な手料理になってしまう。
そのような愚行を避けるためにも、可能な限り自力で食材を入手すべきであり、本節ではその方法について、簡単な考察を行うことにする。
しかし、気をつけなければならないのは、自前での調達を考え出すと、どこまでも遡っていくことが可能という点である。
究極的には、自分で世界を創るところから始めなければならなくなり、「光りあれ」とか「産めよ、増えよ」とか、そこからになってしまう。
本稿はあくまでも『たまごかけごはん』の作り方を論ずるものであり、天地創造についてのものではない。
以下において紹介するのは、この意味で完全とは言えないが、食材の自力での調達について現実的な方法である。
ちなみに、自分で卵を産んだり、鼻から醤油を出したり出来る方にとっては蛇足以外の何物でもないので、読み飛ばしてもらって構わない。
6ー1 『ごはん』の入手
まずは『ごはん』である。第2節の定義を思い出そう。
『ごはん』とは「炊飯された白米」のことである。
『ごはん』を入手するには、白米を調達し、それを炊飯すればよい。
と言葉にすると呆気ないが、『ごはん』の歴史は我が国の歴史であり、さらには、『ごはん』の入手には「炊飯」という調理をその過程に含む。『ごはん』については、容易に語り尽くせるものではない。
したがって、『ごはん』の入手に関して詳細に論ずるには紙幅が足りないうえに、本稿の範囲を逸脱する。
そもそも、『ごはん』の入手に苦戦するようであれば、『たまごかけごはん』作りに挑戦する前に、『ごはん』作りに全力を注ぐべきである。
幸いなことに『ごはん』作りに関しては、数多の良質な専門文献が存在するので、そちらを参照されたし。
別に、ネタを考えるのが面倒くさくなった訳ではない旨、ご了承いただきたい。