補論:『狭義ご飯』と『広義ご飯』
この補論では、「ご飯」の定義に関しての厳密な議論を行い、また、重要と思われる関連事項についても簡単に紹介する。
この分野を専門としない方、論理的厳密性にこだわらない方は読み飛ばしていただいても構わない。
通常、「ご飯」という言葉には2つの用法がある。
1つ目の用法は、「炊飯された白米」という意味での「ご飯」である。これは「うおー、米食いてー」という日常的発言における「米」と同等の意味で用いられる(ただし、生米をボリボリと貪り食う奇特な人の場合を除く)。
2つ目の用法は、「料理全般」という意味での「ご飯」である。これは「ご飯の時間だって何度も言ってるでしょ! いつまでゲームやってるのっ!」とオカンがブチ切れる場面においての用法である。
ここで注意していただきたいのだが、前者の「ご飯」は、後者の「ご飯」に含まれることである。
そこで、前者の意味での「ご飯」を『狭義ご飯』と定義し、後者の意味での「ご飯」を『広義ご飯』と定義する。
厳密に言えば、『狭義ご飯』は『広義ご飯』に包含され、その逆は成立しない。
すなわち、
『狭義ご飯』⊂『広義ご飯』
が成立する(ここで『X⊂Y』は集合『X』が集合『Y』の真部分集合であることを表す)。
『狭義ご飯』が『広義ご飯』に包含されることは自明であろう。
逆の包含関係が成立しないことの反例としては、「大豚ダ○ルヤサイマ○マシ」等が挙げられる。
だからと言って、「ご飯(『広義ご飯』の意)よー」と呼ばれて、『狭義ご飯』だけを出された場合、いくら論理的には正しくても、簡単には割り切れないのが人情であろう。
筆者であれば、ちゃぶ台をひっくり返すのは間違いない。
さらに厳密な議論をするとすれば、
『狭義ご飯』⊂A⊂『広義ご飯』
となる集合『A』は無数に存在する。
例えば『ふりかけ狭義ご飯』は、一般的な『ふりかけ』の定義の下で、上式の論理関係を満たす。
また、本稿の『たまごかけごはん』も同様であることが簡単に証明できる。
なぜなら、卵と醤油の量がゼロな『自明なたまごかけごはん』は『狭義ご飯』であるからである(第2節の註2を参照)。
最後に2つ補足を述べたい。
1つ目は、物事には何でも例外があるように、「ご飯」の定義に関しても同様であること。
たとえば、自分の息子に「ご飯」と名付ける戦闘民族や「ご飯はおかずである」と主張するHTT学派が存在する。
しかし、それらは学会においては無視されるほどの少数派であり、本稿でも取り立てて扱うことはしなかった。
2つ目は、『たまごかけごはん』の性質に関してである。
『たまごかけごはん』は実用的にも非常に重要である(少なくとも日本人であれば)が、それに加えて(第2節で示したように)その定義も簡潔明快である。
それにも関わらず、『たまごかけごはん』の数学的諸性質はほとんど明らかにされていない。
明らかにされているのは、せいぜい、初等的な代数的性質くらいである。(註3)
『たまごかけごはん』のより深い理解を目指して、今後さらなる研究が必要とされる。
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(註3)
『たまごかけごはん』について、いくつかの代数的結果は既に知られている。
例えば、『たまごかけごはん』は加法性を満たす。
すなわち、『たまごかけごはん』と『たまごかけごはん』を混ぜ合わせても『たまごかけごはん』である。
また、『たまごかけごはん』を包含関係によって半順序集合とみた場合、『たまごかけごはん』は束(lattice)となる。
これら以外にも『たまごかけごはん』には、様々な代数構造を入れることが可能である。
しかし、あくまでもこれらの結果は初歩的あるいは自明な結果に過ぎない。
応用に役立つ成果、特に、『たまごかけごはん』の位相的性質について十分な研究がなされているとは言い難い。
なかでも、「『たまごかけごはん』がコンパクトになるには、どのような位相を入れればよいか?」という問題は、以前から重要であると考えられている。
なぜならば、『たまごかけごはん』がコンパクトなら、食べ残したときに冷蔵庫にしまっても、あまり場所を取らずに済むからだ。これは、冷蔵庫の空きスペース確保に生涯を捧げている人々にとっては、革命的とも言える成果である!
残念ながら、しかし、この問題は未解決である。