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第7節 さあ、つくろう

 いよいよ、本稿も最後の節となった。

 前節までで、『たまごかけごはん』作りの前準備はすべて整っている。後は実際に作るだけである。

 細かいことを言えば、箸や丼など他にも必要なものはいくつかあるが、そんなもん百均なりなんなりで各自適当に調達してくればよい。そこまで自作しろなどと言うつもりは筆者にもない。


 もう一度『たまごかけごはん』の定義(第2章参照)を思い出そう。

 『たまごかけごはん』とは「生卵と醤油を『ごはん』にかけてまぜたもの」であり、『たまごかけごはん』作りとは、要するに「かけてまぜろ!」、ただそれだけである。


 ただ、この説明だけで全ての人が『たまごかけごはん』を作れるのであれば、そもそも本稿は、筆者自身と同様に、まったく存在価値のないものである。

 「かけてまぜろ!」だけでは作れない方々のため、実践に入る前に、もの作りでなぜ失敗してしまうか、その一般論を論じてみたい。




 7ー1 失敗する理由


 もの作りで失敗する理由はいくつも存在するが、大別すると以下の4点になる。


 1.作り方を知らない。

 2.作り方を間違って理解している。

 3.作り方通りに作れない

 4.作れていないと思い込んでいる


 順番に見ていこう。


 本稿をここまで読んでいただいた方には、1と2は問題ないであろう。

 『たまごかけごはん』の作り方を知らなかった、あるいは、間違って理解していた方も、今や立派に「かけてまぜろ!」と正しく理解したはずだ。(自信がなければ、1万回くらい「かけてまぜろ!」と唱えるか、紙に書いて部屋中に貼っとけ。)

 特に、ネット上の質問サイトで作り方を尋ねて間違った作り方を教えられてしまった人であっても、もう大丈夫であろう。

 『たまごかけごはん』の作り方に限った話でなく、分からないことがあったからといって、安易に質問サイトで尋ねるのはオススメできない。

 あそこに常駐しているのは、困っている人を助けたいという善意の人ではなく、自分の知識をひけらかし、他人を見下し、優越感に浸りたいヤツらだけだ。

 平気で質問者への人格攻撃をするし、隙あらばマウンティングと自分語りを始めてくるから、近寄らないのが懸命である。


 次は3の「作り方通りに作れない」であるが、「かけてまぜる」だけの簡単な作業でも失敗してしまうのは何故か?

 一般論として、失敗してしまうのは自信がないか、技術がないかのいずれかだ。

 自信と技量の不足を解消するには、2つの方法がある。すなわち、イメトレと反復練習である。

 某ハンターが鎖の具現化修行でやったように、一日中卵のネバネバと戯れ、醤油を飲み続け、米粒の数を数え続け、『ごはん』を咀嚼し続け、『たまごかけごはん』の夢を見るまで『たまごかけごはん』のことだけを考え続けるのも良いだろう。

 また、赤頭のバスケ選手が2万本のシュート練習をしたように、2万個の卵を割ってみたり、醤油を2万滴垂らしたりするのも良いかもしれない。

 いずれにしろ、時間と努力さえあれば解決可能な問題だ。急ぐ必要はない。心ゆくまでやればいい。

 諦めさえしなければ、ドジでのろまな亀なあなたでも『たまごかけごはん』が作れる日が来るであろう。


 最後に厄介なのが、4の「作れないと思い込んでいる」だ。

 客観的には上手に出来ているのに、本人だけは納得していないという場合がある。これは完璧主義者が陥りがちな罠である。

 このような人は自作の出来に満足せずに仕上がった作品を自らぶち壊すこともあるだろう。

 しかしこれは、人間国宝のような熟練職人だったり、稀代きたいの大芸術家であるからこそ許される行為である。(このような行為や天才の奇行を真似して、自分もその仲間入りしたような気になっているアホを見かけるが、はたから見ると滑稽なだけだから、止めた方が良い。)

 ファミレスのバイトが完成したばかりの料理を「納得いかない」と厨房のゴミ箱にダイブインさせたら、間違いなく一発でクビだ。


 勘違いするな!


 あなたは『たまごかけごはん』作りの初心者で、その上、この年まで『たまごかけごはん』すら作れなかった、普通の人々より格段に劣っている、最下層カーストの人間なのだ。世が世なら、生存すら許されないゴミクズなのだ。


 多少失敗していようが、気にすることはない。

 『ごはん』が生煮えだろうが、卵の殻が混入していようが、醤油のかけ過ぎでドンブリが黒い海になっていようが、サルモネラ中毒になろうが、そんなことは些細なものだ。

 これまで自力で何かを成し遂げたことなど皆無だったあなたが初めて作り上げた『たまごかけごはん』だ。

 胸を張って完食すれば良い。




 7ー2 失敗しない『たまごかけごはん』の作り方


 あなたの目前には、ホカホカと湯気を立てている炊きたての『ごはん』、手塩にかけて育て、今では生涯の伴侶と表現しても過言ではない、かわいいメンドリがあなたのために産んでくれた卵、隣室のおねーさんとひと汗流した帰り際に本来の目的を思い出して分けてもらってきた醤油、この3つが並んでいることであろう。(あなたの浮気に嫉妬したメンドリに噛み殺されていなければ良いのだが。)


 さて、材料はすべて揃った。

 後は臆することなく『たまごかけごはん』を作るだけである。


 さあ――


「かけてまぜろ!」

 はじめましての方は、はじめまして。

 ご存じの方は、毎度ありがとうございます。

 まさキチと申します。


 最後までお読みいただきありがとうございます。

 お楽しみいただけたでしょうか。

 ブクマ・評価でご支援いただけると、創作の励みになりますので、どうぞ、よろしくお願いします。


 また、ページ下部(広告の下)からまさキチの他作品に飛べますので、是非読んでみて下さい!

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