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それは呪いか祝福か  作者: さうろんぼ
1/5

宿場町にて

初投稿です。

見苦しい点が多々あるかと思いますが、どうかご容赦をお願いします。

全5話です。

【宿場町にて】



 それは遥か遥か遠き昔のことでございました。

 どれほど昔かと言いますと、神様が世界をお作りになった頃の、とでもいいましょうか。そのくらい昔のことでございます。


 キョムと呼ばれた場所に、ただひとりで、神様はおいでなさいました。ちなみにキョムとは、世界が未だ世界になる前の呼び方でございます。そこには光もなく、かと言って闇もない、文字通り何も無い場所でありました。神様はそのような場所で、それは永き永き刻をお過ごしになられたそうでございます。もっとも、本当に何もない場所でしたので、『刻』という考え方、それ自体も、おそらくは無かったのではないかと、そのように王立図書館指定の禁書には書いてございます。一体、それがどんなものなのか、今という『刻』を生きる私めには、とんと想像がつかないのですが。


 ともあれ、唯一の大いなる存在であり、力ある神様は、あるとき、その御身にどうやら視覚というものがあることにお気づきになられたそうです。このときに、ものを見るのは「目」である、と、そうお決めになられた、と、禁書には記してございます。


 はてさて、しかしながら、その神眼に映ったものはキョムでございました。何もない場所であったキョムを視るとは、どのようなものでしょうか。考えるだに頭の痛くなるような心持ちになるのですが、果たして神様は、キョムを見通すために、光を、ただしくは光という概念を、お生みになったそうでございます。そして光が生まれたとき、等しく一対の概念として闇も生まれたのでした。ただ、ある者に言わせると――何を隠すほどでもありませんが、このある者とは、魔導師協会に所属の、私めの幼馴染にして腐れ縁でございます――、このときに、刻という概念も並行し存在し得るものとして生まれていたのだと、そう云うのです。が、さて。それがどういう意味なのか。果たして問うてみましたところ、喜色満面に、それこそ水を得た魚のごとく生き生きと語り始めましたではありませんか。ああ、これはやってしまったと、悔悟の念に駆られた私めの内心などどこ吹く風。この雰囲気で語り始めましたら、協会の仕事そっちのけで、ゆうに半日は喋り倒しますので、しかも大抵は私めの理解の及ばぬ話でございますから、自然と相槌もおざなりになろうというものです。しかも真面目に聞いていないことに気がつくと、また一から始めようとしますので、おもわず手が出そうになり……反省をする一幕が在ったことは、いえいえ、これはどうでもよい類のお話で御座いますね。


 閑話休題。

 しかしてキョムはキョム足り得なくなったのです。


 ふう……前置きが長くなるのは私の悪い癖でございます。ここまでお話して、まだ本題に届いておりませんのです。端的なお話が出来るようにと、常日頃から重々気をつけているつもりなのですが、どうしても癖というものは、そう簡単には直らぬものでございましょういか。


 さて、キョムに光と闇、それに刻が存在したとき、キョムは最早存在し得ない概念となってしまいました。かと言って、未だ世界は世界として形作られておりません。故に、お話は未だ前置きの段なのでございます。

 光と闇を神様がお作りになった日を始めに、世界が出来上がるまで、7日間の時を要したと言います。この、始まりの七日間につきましては、皆様も幼少のみぎりに枕元で聞かされたことがおありでしょう。


 曰く、

 始めの日に、光と闇が生まれ、

 次の日に、空と、大地と、海を創造なさり、

 三の日に、色をお考えになり

 四の日には、匂いをお作りあそばされました

 五の日には、これに世界と名付けようと思い立たれて

 六の日には、世界に触れるための御手と御足を

 七の日に、肉の躰でご降臨なさいましたのです

 おや、これは皆さんのご存知のお話と、少々違ってございますでしょうか。まあまあ細かな差異は、そうお気になさらぬよう、お願い致します。


 さて、前置きの段はここまで。

 ようやく本題に漕ぎ着けてございます。

 さあさ、お立ち会い、これよりお届け致しますは、とある男女の物語。

 ええ、愛琴の調律もすこぶる良うございます。

 どうぞどうぞ、皆様方、今のうちに、炙り肉に冷えたエールでも如何でしょう、勿論ぶどう酒片手でも結構。

 女将さん、よろしゅうございますか?

 それでは、今宵語るは男女の悲喜劇。

 題しまして―― 


『それは呪いか祝福か』


 ――どうぞお付き合い下さいませ。


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