第一章~左眼に隠された力~ 続。
前回の続き。
足取りは速まり、気づけば家門の前へと立っていた。
あれ以来、眼帯は未だに外していない。奴が見えてしまっては困るからだ。
「ただいま」
玄関を開けリビングへ行く。
眼帯を外してない所為か祖母の姿は伺えない。
「それはそうか」
平日の為、親もいなければ、祖母もいない。
暗い部屋、暗い雰囲気、暗い自分。
左眼はヒカリを失い、見える世界は左は死んだ者が住む世界、対して右眼は生きとし生ける者が見える世界。
今更ながら失明させたことに後悔している。なぜならば、左眼に眼帯を付けているとき、物が立体的に見えないのである。しかし、失明した筈の左眼が見えるなんて可笑しい。
所謂、矛盾と言ったものだろうか。
当初は死者が見えることに対して畏怖していた。しかし、今では不思議とそれが普通に思えてきた。
などと過去を省みていれば睡魔が襲ってくるものだ。
「落ちる......」
次の光景は、真っ暗な暗闇だ。周りには障害物や物、それに空までない。
しかし、そこには一本道があり、舗装されていなかった。あたかも僕をある場所へ促しているかのようだった。
道行く道を歩き続けた。
すると、道の脇に僕が体験した出来事を鮮明に映像化していた。
その頃の僕は、仲間と和気藹々と過ごしていた。しかし、ある日その平和はいとも簡単に崩れ去った。
不幸は祖母の死から始まり、現在に至っている。
それから平和な日々も齟齬し始めた。
ポツリ......ポツリ......。
眼からは思いが込められた滴る涙の滴が何粒も、何粒もこめかみへ流れて行く。
心はすでに壊れていたのだ。いつ滑落するか分からない中、リスクも考えずにのうのうと15年間生きてきた。そんな、自分に苛立ち、苛んだ。
これが僕に対する処罰、天罰、刑罰、そして戒めなのだと今、改めて感じた。
その処罰として、左眼に死者が映るのだろうか、否か。しかし、見える事実には変わりはない。多分、前者なのだろう。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい......。
謝るしか他に方法はなかった。
謝り、それでことが済むのならば警察はいらない。正しく、今の僕の立場だろう。
僕は悪い奴だ。罪人だ。それを理解しなければならない。ならば、罪人らしく残った人生を猶予にし、死んだら罪を償おう。
その手始めに決意した。
僕は探偵になる...そして、事件を解いて僕と同じ悪人を捕まえ、あの世へ行ったらば、罪を軽くしてもらえるのでは......。
人間は楽な方、楽な方へと行くか、否か。
僕は前者だ。だから、自分をしっかり戒める。だから、これからは現実としっかり向き合おう。あっちへ戻ったら眼帯はしない。
そう心に誓った。
はあ~、もうこんな時期ですね。
頑張らなきゃ……。