第一章~左眼に隠された力~ 続。
前回の続き。
眼帯を左眼に当て、ふと気づけば、殺害事件が起こった現場へと足を運んでいた。
そこには、老若男女がテープ沿いにごった返し、彼方此方へと噂が流れ出されていた。
噂の情報を整理すべく、野次馬に聞いたが、何奴も此奴も殺人事件があったとしか知っていなかった。
「チッ、つかえねぇ......」
これではいくら聞いたところで発展は皆無だ。何か、何か方法はないのか。
野次馬どもは使えないが、警察は。無理だろう。後は、後は。
使える頭を全力で回転させた。しかし、良い方法が見つからずじまいか......その瞬間だった。
「「おいおい殺人だってよ、死体の肉塊一つ残ってないらしぜ」」
いた、忘れていた。先ほど左眼に当てがった眼帯を瞬時に外し、死者を路地裏へと導く。
「事件の詳細を教えてくれ。頼む」
すると死者は驚きの様子を最初は浮かべたが、にやりと笑い不吉な顔で、
「「兄ちゃん、俺が見えるんか」」
「「勿論、見えなければ話すことなどなかろう」」
死者は状況を理解したようで。
「「からかって悪いな、しょうがない、教えてやるわ、その前に自己紹介といこうか」」
どうやら生身の生けた人間だったため揶揄したのだろう。
もし、僕がその立場なら同じ対応をしたに違いない。
死者はヤンキーボーイな雰囲気を漂わせていたので腰が引けていたが、自己紹介を聞くに鳥海紅葉は、高校生で夏休みに髪を染め、自転車に乗っていたところ車に轢殺されたらしい。
可哀想に、南無阿弥陀物、南無阿弥陀物......名前可愛いね。
「「殺されたのは高校三年生の女の子、浅間桜ちゃん。成績はそこそこ優秀で青春を謳歌していたそうな」」
紅葉は仲間の死者から聞き込みしたらしい。しかし、混沌とした噂や話を整理しただけなので、信じるに信じがたい。
けれど、聞き込みをしてくれただけでも有り難い。大きな一歩だ。
「ありがとう、紅葉。またわかったら教えてくれ」
「「木葉。忘れていたが、他の奴らの前では名前は禁しな。死者の世界ではそれがルールなんだとさ」」
「なんかごめん」
「「いいってことよ。それより、風邪に気を付けてな」」
忘れていた。今は12月下旬だったことを。
祖母が死に、受験勉強やらなんやら、大変だった。
吐いたため息が、白く、儚く空へ消えていった。
この物語はポメラdm100で執筆させて頂きました。
おかげさまで効率よく書けました。
感想、ご意見お待ちしております。