メッセージ
自宅にマジックインキがない事に気づいた男は、仕方なく近所の文具店に買いに出掛けた。男が店の前までやってくると、閉まった店のシャッターには休業を知らせる貼り紙がしてある。
「なんてタイミングが悪い。今日は休みなのか…。どうしてもマジックインキが必要なのに」
男は困った様子で頭を抱えた。
自宅近くでマジックインキを扱っている店はこの文具店のみで、他は隣町まで足を延ばさなければならない。
しかし、男には隣町まで買いに行く時間などなかった。すぐにでもマジックインキが必要だったのだ。
男はどうしたものかとしばらく考え、頭に浮かんだ妙案を実行に移す事にした。
帰宅した男は、先程犯人にナイフで刺された腹部から流れ出る血を指で拭い、リビングの床にアルファベットや数字を織り交ぜた、犯人を示す血文字の暗号を書き残した。
「初めから、こうしておけば良かったのだ」
と、男は満足した表情で、探偵が自分の残したダイイングメッセージから犯人に辿り着く所を想像して息絶えた。