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掌編小説集5 (201話~250話)

不公平

作者: 蹴沢缶九郎

「世の中に不公平な事は沢山ある。例えば、タバコやお酒を(たしな)んでいても、病気に無縁で天寿を全うする者がいる傍らで、タバコやお酒は一切やらないのに短命の者。例えば、裕福な家庭に生まれ、容姿が良い者。その真逆…。まだまだあるぞ…、ようするに、自分の力ではどうしようもない不公平な事など当たり前にあるのだ。だからといって悲観してはいけない。他人を羨んでも仕方ないのだし、運命には抗わず、生きていくしかないのだ」


と、僕に取り憑いた貧乏神は、僕を諭すように言うと、自分自身に取り憑いた福の神を恨めしく見た。貧乏神の視線に福の神は、


「そんな目で見てはいけません。大体、運命に抗えない事をあなたも知っているのではないのですか」


と、貧乏神の言葉を引き合いに出してにこやかに笑った。貧乏神は悔しげにうつむいたが、何かに気づき、福の神の後ろに視線を移す。そこには、いつのまにいたのか、巨大な鎌を携えた黒装束の男が立っていた。黒装束の男は言う。


「私は死神だ。福の神よ、お前に取り憑き命を貰いに来たぞ」


「そ、そんな…」


死神の言葉に、先程までのにこやかな表情は一変し、福の神は青ざめる。逆に喜んだのは貧乏神。


「やったぞ!! 死神さん万歳!! 福に恵まれた貧乏神なんて悪い冗談だ。さあ早く福の神を殺してください!!」


「早合点するな。私が取り憑いた者を殺せば、その次に私が殺すのは、殺した者に取り憑かれていた者、つまり貧乏神、お前だ」


「馬鹿な…」


一時のぬか喜びに、貧乏神は瞬く間に地獄に突き落とされる。

という事は、貧乏神の次は僕という事になる。重なる不幸に、僕は目の前が真っ暗になった。


そこへ、また別の黒装束の男が現れ言った。


「私は死神だ。死神よ、お前に取り憑き命を貰いに来たぞ」


第二の死神の出現に死神は青ざめ、福の神は第二の死神にすがりつき、喜びに満ちた表情で言った。


「あなたのような方をお待ちしておりました!! 死神に殺されるなんてまっぴらごめんです。さあ早く死神を殺してください!!」


「かまわんが、次はお前の命を…」


「しまった…そうだった…」


福の神は膝から崩れ落ちた。


いずれにせよ、抗えそうにもない不幸で不公平な自分の運命を、僕に取り憑いた貧乏神、貧乏神に取り憑いた福の神、福の神に取り憑いた死神も呪ったはずだ…。

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