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漂流



「う、うぅ…」


 いつの間にか意識を失っていたらしい。

慌てて周囲を見回す。

そこにはただひたすら、宇宙空間が広がっていた。

凡庸な、先ほどまでと大して変わらない宇宙の景色。


どうなってんだこれ。そ、そうだ宇宙船の本艦は?

母船を探して見回したが、それらしき影はない。


え?うそだろ?夢だよな?


「…痛い」


頬を引っ張ってみたが、いつも通りの痛みが帰ってきた。

え?宇宙空間に一人きり?

宇宙飛行士ならまだしも、俺、ただの高校生だよ?ただの斎藤雄二だよ?

どうすればいいのかわからねえ…


顔から血の気が引いていくのがわかった。

どうするんだこれ?俺…死ぬのか?


無音。なんの音もしない。宇宙に1人ぼっち。

あの光に巻き込まれたの、よくわからないけど、たぶん解明されてない現象なんじゃないか?

少なくとも今まではあんな現象聞いたことなかった。

実は自分が無知なだけで、有名な現象であってほしい。

それならきっと宇宙飛行士たちが俺を見つけ出してくれる…よね?

ああ、宇宙に行きたいなんて言うんじゃなかった…。

どうしよう。


不安で仕方がなくて涙が出てきた。

部活の引退試合以来の涙だ。

怖い。死にたくない。


…しばらく、あーでもないこーでもないと考えてみたり、通信できたりしないかと適当に操作機器をいじってしてみたりしたが、うまくはいかなかった。

宇宙旅行客が使用するのを想定しているためなのか、ハンドル、アクセル、ブレーキ以外はまともに動かせないようだ。

幸い、自動操縦モードではなくなっているので、自分で動かすことはできる。

でも、どうすんだよこれ…


宇宙空間の中で、くるくるとゆっくり回りながら小型ポッドは浮遊している。

…ん?あれは地球?

少し離れた位置に、模様がギリギリ目視できるくらいの星があった。青く輝く星だ。


てか、たぶん地球じゃないか?

地球を出発してから、離れていく途中に見えていた地球の姿に似てる。


うん!きっとそうだ!!

絶対地球に違いない。

太陽系に地球みたいな色の星はなかったような気がする。


でも、だからといってどうすべきだろうか?このポッドで向こうの地球のほうへ行ったほうがいいだろうか?

救助を待ったほうがいいのか?

うーん。


ふと、モニターを見ると、O2というゲージが残り8%になっている。

酸素が8%か…


え!?酸素が8%!?え…!?

死ぬよこれ、死ぬ。やばいやばいやばい。

頭がパニックになる。


よく宇宙物の映画で、酸素が足りなくなるシーンを観ると、

『どうせギリギリで助かるんだろ?』

とか思ってたけど、いざなってみると怖すぎる。


死ぬ!!これは映画じゃない!!

とにかく地球の方へ行かなきゃ!!!


俺は地球のほうへ向かってハンドルを回し、アクセルを全開まで踏んだ。



だんだんと、地球の方へ近づいていく。

気づくと、燃料がかなり足りなくなっていた。

大丈夫なのかな。




かなり近くまで来た。

なんか良く見ると、地球じゃないような気もする…。

いや根拠はないけど、なんか違うような気が…。

少し目に入る地形が、地球のとは違う…。

いや、まあ、地球でしょ。

こんな地球に似ている星聞いたことないし。


あれ?てかこれ大気圏突入できないよね?

冷静に考えて。

完全に俺さっきパニックだったけど…。

でもこう考えている合間にもどんどん星へと近づいている。


や、やばい残りの燃料なくなっちゃうけどブレーキかけよう。

そう思い、ブレーキを踏む。

燃料ゲージがみるみる減っていく。


あ、無理だこれ。

すでに重力にとらえられてるみたいだ…。

グングンと星に引き寄せられている。


視界が地球のような星でいっぱいになっていく。


え、俺の人生も終わり?

うそでしょ。


うそでしょ。


せっかく大学受かって、これからだって時だったのに。

母さんにも父さんにもまだ全然親孝行できてねえぞ。


視界が徐々に赤くなる。

大気圏に入ったのだろうか?


ここで燃え尽きて死ぬのかよ。

くそ、くそ。やめてくれ。


友人や、親戚、母さんや、父さん、みんなの顔が浮かんだ。

きっと俺がいなくなって、特に母さんは悲しむだろう。

これでも溺愛されてた自信がある。


「ごめんな…母さん」


涙がこぼれた。


そして俺は、大気圏で燃え尽きた。

 








『大気圏への侵入を感知。大気圏突入モードに切り替えます。』


燃え尽きなかった。


この小型ポッド、意外と大気圏突入もできるみたいだ。

ってことはパラシュートとかも開くんだよな?たぶん。

良かった。こんな号泣したのになんだよって気持ちはあるけど、ほんとに良かった。


しばらくすると大気圏をぬけたのか、雲が見え始めた。

あれ?これパラシュートついてるよね?


どんどん落ちるので不安になっていく。

フワッ、バサ!

あ、パラシュート開いたみたい。


よかったー。自動でやってくれるとかさすがの技術力ですわ。

感謝。感謝。


下を見ると、まず森が見えた。遠くのほうに町らしき場所も見える。

建物があるし、やっぱり地球だ!!良かった。


でもこのままいくと森に落ちてしまいそうだ。

あれ、てかこの森結構でかくないか?

俺こんな所に落とされるのか…?


 小型ポッドはゆっくりと降下し、木にひっかかって止まった。

 俺は無事、着陸に成功したのだ。


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