村に行ったり
コルダ村。
密林のすぐそばに存在するこの村は、元々自給自足の生活を基本としていて外界との交流は、あまりなかった。
密林から採取できる山菜や果実、獣の肉などの森の恩恵を受けて発展してきた。
しかし、森からの恵みを受ける一方で森からの脅威に生活を脅かされてもいた。
密林の奥深くに生息する凶暴な魔獣である。
以前までは、森の奥地から出てくることはなかったが、長い年月をかけて森の生態系が変化し、森から出てくるモンスターも出てきたのだ。
毎年、モンスターに襲われて命を落とす者も少なかった。
手におえなくなった村人たちは、外に助けを求めた。
戦うことを生業とした者たち。
傭兵である。
そうして、この村は傭兵たちを村にいれることにより外との交流を持つようになった。
そんな、村に俺は来ていた。
「ここが、コルダ村?」
「ああ。森と共存し、傭兵の集う村だ」
俺の問いに一歩前を歩くライアンさんが答える。
「大きくは、ないですけど活気がありますね。三人ともこの村の人なんですか?」
「いや、この村の出身はモルグだけだ」
首を横にふるライアンさん。
「そうだよ。いつもは、村の怪我人や病人の相手をする医者のようなことをしている。今回は、森に薬草を取りに行こうと思って二人を護衛に雇ったんだ」
腰のポーチから青白い葉を持つ植物を取り出しながらモルグさんが言う。
「あたしとライアンは、あちこちを旅してるんだよ」
リディアさんが腰の辺りから生えた細い尻尾を振っている。
一体どういう造りなんだろう?
その時。
「モルグさんっ!」
前の方から一人の女の子が走りよってきた。
「あっ、シモンちゃん」
シモン、と呼ばれた少女がモルグさんに駆け寄る。
長い白いろの髪を一本の密編みに結った少女だった。
「モルグさん、大丈夫でしかたか!?さっき、村の傭兵の人達が森から危ない鳴き声が聞こえたって」
「ああ。大丈夫だったよ。ちょっと危なかったけどリディアさんとライアンさんが居てくれたし、彼にも助けられたしね」
「彼?その人……?」
シモンの視線がこっちに向く。
「あ、あのシュンヤです。よろしく」
「こ、こちらこそ……。シモン・ハルルです」
シモンは、おずおずと手を差し出し握手した。
シモンの横にステータスが現れる。
シモン・ハルル
種族:人間
HP:150/150
MP:180/180
職業:見習い薬師
職業能力:ポーション生成Ⅱ
種族能力:なし
固有能力:調合強化Ⅲ
「生産系、なんだ」
「はい?」
「いや、何でもない」
思わず言葉にしてしまったらしい。
「シュンヤくんの魔術は、凄かったよ。まさに天武の才と言うに相応しい物だよ……」
「ホントホント」
褒めてくるモルグさんに便乗してくるリディアさん。
「そんなことないですよ……」
思わず首を振ってしまう。
「……そんなに強いんですか?」
ポツリとシモンが言う。
「お願いがあります」
真っ直ぐこちらを見つめてくる。
「え?」
「母さんが……母さんとわたしを守ってください」
シモンが整った顔に一筋の涙を流して口にしたのは、そんな言葉だった。