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魔法を使ってみる
「階位進化……」
おぞましい変化を見せた巨大な獣を見て、スキンヘッドのお兄さんがかすれた声でつぶやく。
「まずいぞ。魔双頭犬だけなら、この人数でも対処できたが、獄魔番犬となれば無理だ。すぐにでも撤退を――」
猫耳のお姉さんが言い終わる前に、二首狼――否、三首狼のケルベロスは、その鋭い爪を振りかざして襲い掛かってきた。
とっさに灰色髪の大男と猫耳のお姉さんが長剣で受けるが、勢いが強すぎて二人とも吹き飛ばされる。
やばい。
見たところスキンヘッドのお兄さんは回復しかできなさそうだ。
なら、ここは。
「ウォーターウォール！」
右手を前にかざしながら叫ぶ。
すると、俺とケルベロスの間にものすごい勢いの水の壁が出現しケルベロスの体を後方へと吹き飛ばした。
「なっ！？君、魔術師か！？」
スキンヘッドのお兄さんが驚愕に目を見開いているが今はかまってられない。
今度は、頭に炎を思い浮かべる。
巨大な炎の槍。
「ファイアランス！」
右手から噴き出したのは、灼熱の奔流。
その紅蓮の炎は、一気に収束し、一本の槍を形成する。
「行っけえぇ！」
右掌に力を込める。
俺の右手より放たれた炎の槍は、目にも留まらぬ速さで。
ケルベロスの真ん中の頭に突き刺さる。
槍の突き刺さった箇所から盛大に炎が吹き上がり、一気に残りの二つの首と巨大な全身を包み込んだ。
ケルベロスがもがき苦しんだのは数秒だけ。
全身を包む高温の炎に焼かれ、すぐにその体は動かなくなった。
「や、やった…？」
俺の茫然とした声がやけに大きく響いた。
