元素を操って
続きです。
「ここは……」
気がついたら森の中でした。
「………」
これは、あれか?
異世界トリップというやつか?
頭をよぎるその手の作品の数々。
いや、まあ好きだけどね?
「だけど、そんなことあり得るわけ―」
言いかけたところで目の前に妙なものが出現した。
これは――
「光のパネル?」
ディスプレイのウィンドウのような光のパネルが宙に浮いていた。
そこに書かれているのは。
ニシキ シュンヤ
種族:ヒューマン
HP:500/500
MP:1200/1200
職業:魔術師
種族能力:なし
職業能力:なし
固有能力:五大元素掌握皇
「……うん、完全にゲームだな」
まさにRPGの世界を完全に再現したような感じだ。
「魔法の存在がある世界か…」
それに気になるのは一番下の欄にある固有能力。
『固有』とある以上、俺専用の能力と考えていいのだろうが、この能力がどのような物かさっぱり分からない。
「えーっと、固有能力!」
とりあえず、そう呟いてみる。
すると。
「おっ!?」
ウィンドウの内容が変わった。
固有能力:五大元素掌握皇
五大元素である火、水、風、土、雷の属性を持つ魔術を階位に関係なく無制限に使用できる。また、魔術的支配を受けていない五大元素を制御、支配できる。使用時には、魔力を消費する。消費魔力は、発動した魔術のレベル、制御する元素の質量によって変化する。
能力ランク:☆☆☆☆☆
「……強くね?」
属性五個も自由自在とかチートだろ。
ランクなんか星五個もあるし。
「とにかく、一回使ってみるか」
両手を前に突き出す。
ここは、ラノベに出てくる定番の呪文を唱えてみるか?
「出でよ!ファイアボール!」
しーん。
「……」
はい、何も起きませんでした。
うわー、超恥ずかしい。
誰かに見られていたら、マジ首つりモンだわコレ。
「あれだ、イメージだ。きっと、イメージが足りてないんだ」
コホンと咳払いして心を落ち着ける。
それでは、気を取り直してもう一回。
今度は、脳内にしっかり火を思い浮かべて。
「ファイアボール!」
ゴウッ!
轟音と共に量の手のひらからバスケットボール大の火球が飛び出した。
凄まじい熱量を放つ火球は、そのまま一直線に前方にそびえる樹木に向かっていき、ぶつかった瞬間一気に燃え上がって木を炎で包み込んだ。
「やばい!」
火事になる!
俺は、今度は頭に流れる水を思い浮かべる。
「ウォーターボール!」
今度は、手からさっきの火球と同じくらいの大きさの水の塊が出現して、同じように木に突っ込んでいった。
木にぶつかった水球は、勢いよくはじけ飛び飛散した水しぶきが炎をかき消した。
「ふーっ、セーフセーフ」
危なかった。
危うく山火事にでもなるところだった。
だが、これでハッキリした。
俺は、どうやら元素を操れるようだ。
火と水は出せたから恐らく他の三つも出せるのだろう。
もう一度ウィンドウを開いてみる。
MPの欄が1200/1200から1150/1200に変化している。
どうやら元素を球状にして放つのは、一発あたり25のMPを消費するようだ。
もっと、MPを消費すれば派手な形にできるのだろう。
「とにかく、これで確認は終わりだ。次は、探索か?」
周りを見渡す。
辺り一面、木、木、木。
完璧に密林だ。
下手に動いたら迷いそうで怖いんだが。
などと考えていると。
ガサッ。
背後で茂みを揺らす音が響いた。
「へっ?」
茂みをかき分けて出現したのは――。
「二首狼!?」
漆黒の毛並みを持つ首を二つ生やして大型の山犬だった。
更新は、不定期です。