表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

15 月乃さん視点・征士くん視点

● 月乃さん視点


 中等部のときの修学旅行先は沖縄だった。

 あの青い青い海と空は、今でも鮮明に覚えている。

 友人達と観光名所も回ったが、一番印象に残っているのがシュノーケリングしたことだ。水中眼鏡やシュノーケル、足ひれなどを装着し、海面から水中の景色を楽しんだ。

 泳ぐというより、海面に浮かびながら楽しめたので、小さい知乃や夢乃を連れて今度行こうか。

 テレビで沖縄特集をしていたので、見ながらそう考えていると、征士くんに声をかけられた。


「沖縄行きたいんですか?」

「うん。中等部のとき行ったの面白かったから、思い出しちゃって……。家族で行きたいなあって思ったの」


 白い砂浜から海に入り、美しい珊瑚や熱帯魚を家族で見たい。

 沖縄の海に思いを馳せていると、征士くんに腰を抱かれた。


「想像でも月乃さんだけ遠くに行かないでください。一緒にいるときは、二人で同じものを見ましょう」

「あら、想像まで嫉妬するの?」


 さすがに可笑しくてくすくす笑うと、幾分目を逸らされた。


「考えまでも月乃さんを支配したくなるんです。……悪い、ですか」


 言動が可愛らしくて、私も征士くんの腰に腕を回す。


「いいえ。そんなに想ってもらえるなんて嬉しいわ」


 気持ちがいい季節に二人で一緒に沖縄の海を見よう。そう心に誓った。


 ♦ ♦ ♦


● 征士くん視点


 月乃さんのリクエストで、二人で香川県を旅した。

 彼女は大学で『平家物語』を専門に学んだので、縁の土地を旅したいとのこと。

 別に反対する理由もなく、二人で電車に乗り、まず高松に到着した。昼時だったので、名物の讃岐うどんを食べる。


「すごく美味しいわね!」

「そうですね。出汁の味も茹で具合も絶妙です」


 よく味わって食べた後、栗林公園へ向かった。

 栗林公園は、国の特別名勝に指定されている庭園の中で最大の広さをもつ。四季折々の植物がとても美しく配置されていて、歴代藩主が百年の歳月をかけてつくりあげたという大名庭園には圧倒された。

 栗林公園を後にし、今度は月乃さんリクエストの屋島へ行った。

 屋島山上からは、源平合戦の合戦場跡が一望出来る。瀬戸内の海を見つめていると、月乃さんが『平家物語』の文章を読んでいた。


『南無八幡大菩薩、我国の神明、日光権現・宇都宮・那須のゆぜん大明神、願わくはあの扇のまンなか射させてたばせ給へ。これを射そんずる物ならば、弓きりをり自害して、人に二たび面をむかふべからず。いま一度本国へむかへんとおぼしめさば、この矢はづさせ給ふな』


 彼女が音読した語句は僕でも知っている。那須与一が目をふさいでこの言葉を発し、扇を見事に射落とした場面だ。

 旅をして、文学や歴史に触れるのも悪くない。また月乃さんと史跡探訪の旅へ出かけようと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ