14 月乃さん視点・征士くん視点
● 月乃さん視点
今日の征士くんの誕生日には、高級傘の他に、白いアネモネの花束もプレゼントした。四月二日の誕生花。花びらが可愛く揺れている。
「お誕生日おめでとう! アネモネの花言葉は『期待』や『希望』なんですって」
傘と花束を差し出すと、征士くんは微笑んで受け取ってくれた。
「スタイリッシュな傘ですね。ありがとうございます」
「征士くんに似合うと思って買ったの」
上品な色使いの傘が、征士くんには似合う気がした。実際彼が持っても違和感はない。
「花は……アネモネですか」
「?」
少しばかり残念そうな征士くんを不思議に思う。
可愛いアネモネの花も、傘と同じで似合うと思ったのだが……可愛らしすぎただろうか。
首を傾げていると、征士くんは本から栞を取り出した。
「僕はこっちの方がよかったです。四葉のクローバー。一生懸命探したんですよ」
四葉のクローバーも四月二日の誕生花らしい。何故、征士くんが私に贈るのだろう。押し花にされた四葉のクローバーをもらうと、彼は私の頬に口付けた。
「四葉のクローバーの花言葉は『私のものになって』です」
「……もう」
花を贈られなくても、とっくに私は征士くんのものなのに。
でも、一生懸命探してくれたという四葉のクローバーはとても嬉しい。私の方がお誕生日お祝いされた気がしながら、彼の頬にそっとキスし返した。
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● 征士くん視点
四月二日生まれは、小さい頃少し損している気分だった。
保育園に入園しても、小学校に入学しても、誕生日が終わってしまっている。入学してからも春休みだから、誰も友達は祝ってくれない。
「つまんないな。誕生日って」
愚痴をこぼすと、兄の聖士は苦笑いした。
「そんなこと言うな。今は俺達家族が祝ってやるからさ。そのうちお前に別の家族が出来たら、そっちに盛大に祝ってもらえ」
「別の家族?」
「ま~だ、お子様征士には早い話か。ははっ」
からかわれたようで、むっとする。家族として祝ってくれるのは感謝するけど。
──今なら兄の言葉も納得できる。別の家族に……月乃さん達にお祝いしてもらえるのだから、これほど嬉しいことはない。
「お誕生日おめでとう、征士くん! 今年のお祝いケーキとプレゼントはね……」
月乃さんや、知乃、夢乃が用意してくれたものだったら、何でも喜ぶ。我ながら単純だ。
さて、今年は何をもらえるだろう? この香りは……レモンのケーキかな。あのリボンの包みは鞄かな。
何をもらっても、ずっとずっと大事に、大切にしよう。
「ありがとうございます! 早速あけますね」
兄の予言通りでちょっと悔しいが、それでも幸せいっぱいな四月二日になった。




