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3.日常紹介-後編-

 ガシャン、ガシャン



 いきなりだが、俺の通う学校の門はフェンスである。いや、これじゃ分からないか。えーと、普段は普通の門なんだが、生徒が完璧にいなくなると門に鉄の棒が通る、という謎なセキュリティであるという噂があったんだが、どうやら本当だったらしいな。



ガシャン、ガシャン



 囚人が檻を叩くような真剣さで門のフェンスを叩いているのは、我らが担任、江森えもり 一美(かずみ)先生である。

 にしても、あの顔はまずいだろ。飢えた亡者みたいだ。生徒に綺麗で可愛いと定評のあるルックスが、あれでは人気ががた落ちどころか永久追放だ。



ガシャン、ガシャ――――



 ふむ、どうしようか。本心を言うとあまり関わり合いたくないんだけどな。どうせ――


「ねえ、高里くん」


「うわっ!」


「高里くん、先生の一生のお願い、聞いてくれないかな?」


「えっ?」


「先生、朝ごはん食べてないんだ〜」


「はぁ」


「お金は職員室なんだ〜」


「はぁ」


「ここまで言えば分かるよね〜」


「はい?」


「ここまで言えば、頭の良い高里くんは分かってくれるよね〜」


 先生が言いたいことはなんとなく分かる。だが、その選択は俺にとっては厳しいものでしかないんだが・・。


「先生、俺用事があるんで――」


「ご飯はまだかな?」


「せんせ――」


「ご飯はまだかな?」


 俺が良いと言うまで繰り返す気か?しょうがない。


「わかりました。けど、コンビニで我慢してくださいね。他はまだ開いてませんから」


「うんうん。分かってる、分かってる♪」


 そういうことで、勇者(一美)はお供(怜)を連れて、敵(食料)を討伐し(食べ)に魔王の城の食料庫コンビニへと旅立ちました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「つーか、アレはねーよな」


 結局、先生は俺の財布の金を全て食べ尽くした。いや、物理的にではなくて。ん?実際無くなったんだから、物理的なのか?もう、訳分からん。


「うわっ!怜がいる!幽霊か?」


「――――!」


 俺が、突然の大声にびっくりしていると、そいつは俺の方へやってきた。まぁ、他に誰もいないしな。


「幽霊か?お前の『怜』は幽霊の『霊』だったのか!」


「んな訳あるか。俺はもう疲れてんだよ」


 コイツは、榊原さかきばら あかね。俺が引っ越すまで、幼馴染だった奴だ。


「朝からずいぶんローテンションだね。今からそんなんじゃ、耐えられないよ」


「あ?耐えるって、何によ?」


「何って、今日から生徒会でしょ?」


 生徒会?なんだそりゃ?正賭会?『正しく賭け事をしましょう』ってか?いやいや、んな訳ない。


「て言うか、ずいぶん機嫌悪いわね」


「うるせぇ。それより、そんな話初耳なんですが?」


「怜は休んでたからね。昨日メール送ったでしょ?」


 言われて携帯を開く。昨日の着信メール・・・・0件。ちなみに、俺は毎日メールは消している。例えば、今日届いたメールは明日の夜、寝る前に消す。つまり、


「届いてないぞ」


「えっ、そんな訳ないわよ!」


 慌てて自分の携帯を開く茜。30秒ぐらい、一生懸命携帯と睨めっこして、


「ごめん、送るの忘れてた」


と、あっけらかんと言った。いやいや、ここまで笑顔が似合うのも凄いな。まったく、機嫌悪いのも直っちまった。まあ、だからと言って、先生への恨みが無くなった訳ではないけどな。


「別にいいよ。それより生徒会って?」


「なんでも、留学してた生徒会長が帰ってきたらしいわよ」


「?だからと言って、俺に関係なくね?」


「年度が変わったから、メンバー変更しなきゃならないのよ。でも、生徒会長さんは向こうに行ってたんだから、こっちの生徒を知らないでしょ?」


 まあ、そりゃそうだろうな。つーか、なんでそんな奴が生徒会長やってんだ?


「だから、目を瞑って名簿を指さして、そこにあった名前の人が生徒会役員に選ばれたらしいわよ」


「テキトーだな、おい。そんなんでいいのか、生徒会長として」


「いいんじゃないの?実際、そうして選ばれたんだから」


「つーか、ソイツ留学してたんだろ?なんで、生徒会長やり続けてんだ?」


「去年の生徒会長が、どうやって決まったか知ってる?」


「いや。そんな裏情報、知らんし」


「私も先生に言われて初めて知ったんだけど、うちの学校って生徒会はあったんだけど、役員が誰もいなかったらしいよ」


「どういうことだ?じゃあ、去年あった『学食を造ろう運動』は誰が起こしたんだ?その頃はまだ生徒会長いたのか?」


「生徒会長は、五月にはもう行っちゃってたらしいわよ。なんでも、生徒が一丸となって動いたらしいわよ」


 それで成功したのか?まるで一揆だな。鍬とか持ち出してないだろうな。だとしたら恐ろしいぞ、この学校。


「とりあえず、リーダーが居なくても、皆で一致団結してたからいらなかったらしいわよ」


「なんで、そんな学校入っちゃったんだ、俺」


「まぁまぁ。で、去年立候補したら、一年生で生徒会長になったんだって」


「一年?・・つまり、俺らと同い年か?」


「そうらしいわよ。で、留学しちゃったわけだけど、どうせ誰もやらないだろうから、その人がそのまま生徒会長やってるらしいわよ」


「なんだか、この学校に不安を感じてきたんだが」


「それで、昨日、その人が日本に戻って来たから集会やる、って話」


「・・・・一言いいか?」


「なに?」


「無駄に長い!」


「ひ、人がせっかく説明してあげたのに、何を言うかと思えば苦情なわけっ!」


「長いものは長い。例えば、『留学していた生徒会長が戻ってきたから、生徒会の集まりをする』とかさ。その他のことは、俺が質問したら言えばいいだろ」


「――っ!人がせっかく親切にしてやったのに!」


 そう言って、茜は近くの椅子を手に取り――って、マズイだろ!


「おい!ソレは――」


「うるさいっ!」


「――――!」


 おいおい、開始3話目でいきなりピンチ?これが『女心と秋の空』ってやつですか?いやいや、それどころじゃなくて、避けろよ、俺。


「――――?」


 ちょっと待て。避けたら椅子が壁にぶつかる→大きな音が出る→人が来る→泣きながら物を投げる茜、それを避ける俺→俺、生徒指導室へ→退学?→BAD END

 それはマズイ!どうすれば――――



  ゴスッ



「ぐはっ!」


 なんか、俺って昨日(昨夜)から運がなくね?あー、もしかして、隣の奴のせいか?今日帰ったら、絶対に文句言ってやる。



 そんなことを考えながら、俺の意識は闇に落ちていった。




.

2話目の投稿から間が開いてしまい、申し訳ございませんでした。

見てくれてる方が居てくださればありがたいです。

そして、できれば感想か何かをください。栄養になります。

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