1.安眠妨害
ガサゴソ…ガサッ……ズドンッ!!
とてつもない音によって夢から現実へと引き戻された。つーか、『ズドンッ!!』って……。一体何をしてるんだ?
んー。(思考中)
……(だいたい)2秒後……
分からん。とりあえず我慢して寝ることにする。
現在時刻午前2時。俺が起きてから、既に30分ぐらい経っている。音はまだ続いている。が、寝れないのは音のせいではなく――もちろん音も煩いが、単に一度起きてしまったせいで、眠気がどこかへ飛んでしまっただけである。
「カムバック、俺の眠気!」
と、言っても眠気が戻ってくるわけがない。
「仕方ない。水でも飲むか」
俺の家は3LDKである。ちなみに一人暮らしである。両親は建前上、祖父母のために、山奥に豪邸を建てて一緒に暮らしている。そう、建前上は。両親の本音は、
「アンタ育てんのが面倒になったから、アタシらでてくから」
「金はかなり置いていくから、心配はいらないよ」
である。
「まったく。迷惑な親だ」
そんなことを言ってるうちに、あっという間にキッチン到着。さてと、コップを取って水を入れて、と。
ズドーンッ!!!
ガチャン!
いきなりの音に驚き、コップを落とす俺。もはや騒音を通り越した公害。
俺は自室に向かい壁と向き合う。まあ、ここはとりあえず一言。
「うるせー!!!」
ドンッ!!
叫びながら壁を殴る。これで少しは静かになってくれればいいんだが………
「うるさいわよ!!!」
ドンッ!!
いきなりの反撃に俺、再びビックリ。というか、普通反撃するか?
「そっちがうるせー!!」
ズドンッ!!
やられたらやり返せ。俺は親にそう習ったからな。でもやり過ぎたかな。だって壁が凹んでるし。。
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壁の向こうから反応が返ってこなくなって3分。
「諦めたのか?まあ、いいや。これで心置きなく寝られ―――」
ドンドンドンッ!
壁ではなく、ドアが叩かれた。
「おいおい、嫌な仕返しだな」
だが、一応玄関にいってみる。今は冬。こんな夜中だから、外はかなり寒い。もしも、客だったら可哀相だからね。
玄関到着。ドアを開ける。目の前には―――
「オーナー?」
「鈴木さん。ちょっといいかしら?」
「はい。別に構いませんが、俺は高里です」
「知ってるけど?」
はい?知ってるのに間違えるって?アレか?考えてることと喋る内容が違うってやつか?そうなのか!?
「あなたのお隣りさんから、『隣の人が壁を殴っていて寝れない』って苦情がきたんだけど、ホント?」
隣のやつ、オーナーに言いに行ったのかよ!?しかも、加害者が被害者になってるし………。
「本当ですけど、それには誤解が―――」
「ここは8階です!」
典型的な聞き間違いだな。しかし、オーナーはマジギレ中か。睡眠無しを覚悟するべきかな。
「あなたの家で、きっちりと相対性理論について語って、ゲホ…………近所迷惑について教えてあげるわ!!」
相対性理論!?アインシュタインか!?こりゃ、マジで寝れそうにないな………。
■■
そして、所変わって俺の家。怒られ始めてどれぐらい経ったのか。壁に掛かっている時計によると、今は4時。つまり、2時間も経過したらしい。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「……はい」
「ニュートンが万有引力を発見したとき、リンゴが落ちたって言われてるけど、私が思うに勝手にリンゴは落ちないと思うの。で、私独自の計算によると、たぶん風が強かったのよ」
俺は『アンタは過去に起こったことを、計算で求められるのかよ!』と、ツッコミを入れそうになったが、そうすると話が長引くのでやめる。つーか、そんなんどーでもよくね?
「そこでニュートンは、吹き飛ばされまいと木にしがみついた。その時!彼の頭にリンゴが落ちて来た!そうして彼は、万有引力に気付いたのよ!!」
おもいっきり過去を無視してるよ。だいたい、何故木にしがみついたんだ、仮想ニュートン。家に帰れば良かったじゃないか。
「これでまた一つ賢くなったな。怜」
果たして、俺は賢くなったのか?あんなどうでもいいことを知ったぐらいで賢くなれたら、受験生は苦労してないだろう。
「なんだ、その不満そうな顔は?」
「いえ、知香さんらしいなぁ、と」
紹介が遅れたが、この人はこのマンションのオーナー、宮之原 知香さん。女性。大学生。
「私が私じゃなかったら何なんだ?」
かなり話しやすい性格なので、知り合いから相談事を持ち込まれるのが多々あるらしい。そして、この人も面倒見がいいので断れないらしい。それで苦労するのだが、人(俺)の所に持ち込んでくる。知香さんが言うには『楽しいことは分け合う信条』らしい。迷惑なことだ。
結局、俺が解放されたのは5時頃だった。俺は、今日の学校で寝ないでいられるだろうか?
未熟ですが、頑張っていきます。応援や感想、誤字脱字の指摘等ございましたら、よろしくお願いします。