引用
〈雲覆ふ天上の事息白し 涙次〉
【ⅰ】
「だうも〜、夢雀・POMの助で〜す」-「(オフコースの眞似で)サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ〜」-「出て來たと思つたもうサヨナラかい! 大體それ*『東洋イチ』さんのネタやろ!?」-「引用だよ、引用。リスペクト!」-「引用つてなあ... フリッパーズ・ギターぢやあるまいに(苦笑)」(中略)「大體僕がネタ出しで苦しんでる時に、お前はちやらちやら遊んでる。全く以てけしからんよ」-「お、今度は説教か?(POMの助の頭をこつんと叩く)かうしてやる」-「親にも手を上げられた事ないのに... パパに云ひつけてやる!」(中略)「仲惡いやうに見えるけど、本當は仲良しなんですよ。こないだも徹マンしたよねー」-「POMだけに、ポン!」-「今度は『哭きの竜』かよ!?」(中略)「ぢや、これにて。三笑亭夢雀・POMの助でした〜」-「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ〜」-「(# ゜Д゜)もうえゝつちゆうねん!」-「お後が宜しいやうで。お仕舞ひ」。
* 前シリーズ第6話參照。
【ⅱ】
* 夢雀・POMの助のレギュラー番組、『ハチャハチャ大行進!!』の視聴率は鰻昇りだつた。それを受けて、「年末拡大スペシャル」と題して特番が放映された。然し... 誰が密告したのかは知らないが、番組付放送作家の日賀照美は【魔】だと云ふ。日賀がラジオの構成から身を起こした事は、既に書いた。それ以前、彼はラジオ番組のギャグを投稿する、リスナーの一人に過ぎなかつた。彼は舊秩序の支配する(ルシフェル統治時代)魔界から、その投稿をしてゐたのだ。『ハチャハチャ大行進!!』番組統轄役のプロデューサーが、彼を詰問した。「きみは本當に【魔】なのか?」-それに對し日賀は沈黙を守つた。「その沈黙、yesと云ふ答へだと取つていゝのだな?」。一體誰が彼を「サシ」たのか。POMの助は番組のその内紛をカンテラに打ち明けた。POM「例へ日賀さんが【魔】だつたとしても、彼を斬らないでやつて慾しいのです。彼は實地に触れたところ、人畜無害な【魔】なのです。この儘ぢや始まつたばかりなのに、僕逹の番組が滅茶苦茶になつちやふ...」-カンテラ「ふうむ。問題は一體誰が密告したか、だな。そいつも【魔】に違ひない。それにしてもきみは【魔】に魅入られ易過ぎる。** ルシフェルに『禁断のネタ』を愛されたかと思ふと、次は***『惡魔商會』の件...」-「それには僕も飽き飽きなんですよ。僕の身上はブラックジョークですから」
* 前シリーズ第194話參照。
** 前シリーズ第143話參照。
*** 前シリーズ第150話參照。
※※※※
〈屈辱は一日を置かずやつて來る書けば書く程溜まる憤怒よ 平手みき〉
【ⅲ】
結局、テオの調査で、密告者はアルバイトのアシスタント・ディレクターだと云ふ事が判明した。カンテラ・じろさん、番組の現場に乘り込んだ。この【魔】は埓もない下つ端だつたので、カンテラが剣をちら付かせると、直ぐにどろんと消えた... 日賀「有り難うございます」-「禮には及ばんよ。だうせプロデューサーの方から、仕事の料金は頂く」。かうして『ハチャハチャ大行進!!』は、首の皮一枚と云ふところで【魔】の手から守られた。じろさん「だうやら【魔】は人間界にも棲息してゐるらしいね」-カンテラ「まだ我々の仕事は殘つてゐるやうだな。氣を引き締めなくちや」
【ⅳ】
以上のあらましを、カンテラはルシフェルの墓前に報告した。最近では一つ事件を片付けた後の、習慣となつてゐる。ルシフェル「おゝPOMの助は我が最愛の藝人ぢや。宜しく見守つてやつてくれよ」-カン「今度墓前に連れて來るよ。ルシフェル、あんたもテレビ観に墓から出て來ればいゝのに」-「儂はかう見えてもはにかみ屋でな。皆に顔見せるのが恥づかしいんぢやよ」-「はゝ、良く云ふよ。あんたも丸くなつたな。年始めは事務所のメンバー全員で、屠蘇を祝ふ事になつてゐる。それには參加してくれよ」-「考へて置かう」。さて、來年が見えて來た。然し、カンテラ一味の闘ひはまだまだ續く。續いてくれなきや、私、永田も* 冥府で時間を持て余してしまふ・笑。が、全ては閑暇から産まれるのだ。退屈は世人に嚥ませる最髙の良薬である。贋ラ=ロシュフウコオ。ぢやまた。
* 當該シリーズ第2話參照。
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〈血圧は時限爆彈毛布剥ぐ 涙次〉
PS:『哭きの竜』(永田のお氣に入りの麻雀漫画)の作者・能條純一氏には特に感謝致します。笑ひのネタにして、だうも濟みません。と同時に、小沢健二・小山田圭吾兩君にも、スペシャルなリスペクトを。お互ひ齡取つたね(同年)。俺の事覺えてゐてくれたら嬉しいけど。彼らは俺がバンドマンを辞めて、こんなところに小説らしきものを書いてゐるとは知らない。I wish you have a happy new year!!




