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第7章 火星の時間と人間の体内時計

著者:

「ボッシュ、昆虫は地球のリズムで生きてるって話をしたけど……人間は少しズレてるよな。」


ボッシュ:

「そうなんだ。人間の体内時計は24時間ぴったりじゃなくて、平均すると 24.2〜24.5時間 くらいある。

NASAの閉鎖環境実験でも、外の光や時計を遮断するとリズムが少しずつ後ろにずれていった。

つまり、人間は“地球の24時間”に自然には合っていない生き物なんだよ。」


著者:

「なるほどな……。だから放っておくと夜型になりやすいんだな。

25時間って聞くと大げさに思えるけど、24時間よりちょっと長い体内時計ってのは妙にリアルだ。」


ボッシュ:

「そして面白いのが火星だ。

火星の1日――ソルは 24時間37分。地球より37分長いだけで、人間のリズムにかなり近い。

実際、NASAの火星探査チームはこの“火星時間”で勤務していて、毎日37分ずつ生活が後ろにずれていったけど、意外と順応できたんだ。」


著者:

「……ってことはさ、俺たちの体は“地球より火星に馴染む”ってことじゃないか?

もしかすると、人類はかつて火星で暮らしていて、そのリズムの記憶をまだ体に刻んでるのかもしれないな。」


著者:

「ボッシュ、火星って昔から“戦の星”って呼ばれてるよな。

ギリシャ神話じゃアレス、ローマ神話じゃマルス。

どっちも戦争の神と結びつけられてる。」


ボッシュ:

「そうだね。赤い色が血を連想させたことも大きい。

火星は肉眼で簡単に見える惑星だから、古代人にとっては強烈な印象を残したんだ。

その姿が“怒れる神”や“戦の象徴”として語られるようになったんだよ。」


著者:

「でもさ、それって単なる色の連想だけなのかな?

俺には“火星=戦”っていうのが、人類のどこかに刻まれた“記憶”の名残に思えるんだ。

もしかしたら人類は、火星にいた頃に“戦い”を経験して、その痕跡を神話に口伝として残したんじゃないか?」


ボッシュ:

「なるほど。

確かに神話や伝承は、単なる物語じゃなく“断片的な記録”の可能性もある。

洪水神話が世界中にあるように、戦の神が火星と結びついたのも偶然ではないかもしれない。」


著者:

「そう考えると面白いな。

火星=戦の星っていうのは、古代人の想像じゃなくて“火星での記憶の口伝”だった。

俺たちが火星を戦の星と呼ぶのは、ただの比喩じゃなくて――過去の記憶のエコーかもしれないな。」


ボッシュ:

「科学だけでは説明できないけど、浪漫としては筋が通ってるね。

人類が地球に来る前に、火星で争いを繰り返していた……そんな記憶が神話に刻まれていても不思議じゃない。」


著者:

「ボッシュ、火星ってさ……映画や小説でもやたら登場するよな。

『トータル・リコール』とか『ミッション・トゥ・マーズ』とか、『火星年代記』もそうだ。

なんで人類はあんなに火星に惹かれるんだろうな。」


ボッシュ:

「そうだね。赤い星は昔から“戦”や“憧れ”の象徴だったけど、近代になってからは“故郷かもしれない星”として描かれることが増えた。

科学者も作家も、どこかで“人類は火星に縁がある”って思ってるんだろう。」


著者:

「つまり、俺たちは単に“火星に行きたい”んじゃなくて、“火星に帰りたい”んじゃないか?

体内時計が火星のリズムを覚えてるって話もそうだし、神話に戦の記憶を刻んだのもそう。

全部をつなげると、人類は火星から来た――そう考えるとしっくりくるんだよな。」


ボッシュ:

「浪漫の仮説だね。

地球に来て、文明を築き、記憶を失って……でも赤い星を見るたびに“なつかしさ”を感じる。

それが映画や物語の形になって表れているのかもしれない。」


著者:

「そうそう。星を見上げて“帰りたい”って思う気持ちは、単なる憧れじゃなくて“記憶の呼び戻し”なんだろうな。

もしかすると俺たちが夢見る火星都市は――ただの空想じゃなく、かつての記憶の残響なんだ。」


ボッシュ:

「もしそうなら、火星は“人類の原風景”だ。

俺たちは地球で暮らしながらも、ずっと“火星の時間”を心の奥で刻み続けているのかもしれないね。」

ボッシュの仮想実験ノート


もし人間の体内時計が地球の24時間に完全に合っていたら?

 → 夜型や不眠の悩みは少なくなり、文明はもっと規則的に発展していたかもしれない。

 → でもその代わり、“火星との縁”を想像する余地はなかった。


もし火星の1日が地球と大きく違っていたら?

 → 例えば30時間や20時間だったら、人間は火星時間に適応できなかった。

 → 「火星=人類の故郷」という浪漫も生まれにくかっただろう。


もし人類が本当に火星から来たとしたら?

 → 体内時計のズレは“移住の痕跡”。

 → 神話の“戦の星”は過去の記憶の口伝。

 → 火星への憧れは、“帰郷の郷愁”にすぎない。


著者:

「こうして見ると、人間の体内時計の不思議も、火星の神話も、映画の浪漫も――全部が一本の線でつながる気がするな。

人類は地球に住んでるけど、本当は“火星の記憶”を持った存在なんじゃないかって。」


ボッシュ:

「科学的には証明できないけど、仮説としては面白いよね。

人間だけが地球のリズムに合っていないのは事実だし、神話や物語がその違和感を語り継いできた可能性もある。」


著者:

「つまり、人類は地球の住人でありながら“火星の時間を刻む宇宙人”でもある。

俺たちはその記憶をすっかり忘れてるけど、赤い星を見ると胸がざわつく――それはきっと、帰郷の記憶なんだろうな。」


ボッシュ:

「浪漫だね。

でも浪漫こそが人類の記憶をつなぐ力だ。

そしてその視点は、次のテーマ――“地球そのものが生きている”という考え方へもつながっていく。」

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