ベルティーユは見た!
モブ…というか、カリンに靡かなかった令息の婚約者から見た物語です。
ベルティーユは見た!
シフィン伯爵家の次女、ベルティーユは語学に堪能である。
金茶の髪に苔色の瞳の、派手な見た目とは裏腹に、勤勉な女性でもあった。
寄親であるアドモンテ公爵家は、立派な図書室を持っていて、寄子や分家の子女や、領民の中でも読み書きが出来て勤勉な者に立ち入りを許可している。
ベルティーユは幼い頃から、そこに入り浸っていた。
アドモンテ公爵令嬢のグレイシアと彼女の兄の三人は飛び抜けて優秀だったが、正直その四人以外の中で選ぶならば、自分が一番ではないかと自負している糞餓鬼だったのである。
振り返るたびに、ベルティーユはその黒歴史期間の記憶を消去したくて身もだえるのだったが。
その時はとにかく、わたくし優秀!フフン!てなもんであった。
何時ものように入り浸って勉強していると、いつしか顔見知りの少年少女達と出会い、その顔を覚える事になる。
地味な顔の伯爵令息は、カルネス家のアルトーという。
何時も真剣な顔で本を読んでいて、他の人間に見向きもしない。
だから、ベルティーユも彼に対しては、地味顔としか認識していなかった。
そんなある日、驚くべきことが起こったのだ。
今でも、あの時、あの場所に居られたのは運命だと思っている。
お屋敷から書庫への道すがら、聞き慣れない言葉を話す一団が居た。
くすくすと、波打つ金の髪を揺らしてあどけなく笑っているのは、グレイシア公女で、その周囲を取り巻いている華やかな殿方達は彼女の兄だ。
眼福……!
周囲を見れば、あの地味顔アルトーもぽけっと見惚れた様に立っている。
ただし、その口元は何かを話すみたいに、ぱくぱくと動いていた。
何?あれ?もしかして?
あの人達の言葉、分かってるの??
ベルティーユだって、三カ国語を覚えているのに、あの言葉が分からない。
なのに、何でお前が知っている!?
華やかな一団が通り過ぎて行き、ぽうっとグレイシアに見惚れていたアルトーは、凄い速さで図書室へと引き返していく。
それはもう物凄い速さだった。
ご婦人と一緒に散歩している、小型犬だってあんなに速く足を動かせないだろう。
だが、ベルティーユも必死でその後ろを追った。
あの地味顔が何をするのか、とても気になったからだ。
本棚に向かったアルトーは、語学関連の書架から、いくつもの辞書や言語学の本を取り出して、机に並べて何やら調べ始めた。
ベルティーユはすすすっと一番近い書架の影に隠れて耳を澄ます。
「………そうか、ロアンヌ語系の……いや古語に……」
ぶつぶつ聞こえてくるが、要領を得ない。
ロアンヌ語系……って何だっけ?とベルティーユも首を傾げる。
確か、今の大陸の言葉の元となっていた昔の言語の系統を表す言葉だ。
「ねえ、何してるの」
思わず好奇心に負けて、ベルティーユは声をかけてしまった。
「ああ、聞き慣れない言葉を聞いたから、調べずにいられなくてね……もしかして、滅んだ言葉なのかもしれない……」
思ったより饒舌なのはいいが、ベルティーユを見る事もしないどころか、本から顔も上げずに、目で文字を追っている。
滅んだ言葉、というのなら、アルトーも話せない言語だという事にベルティーユも気が付いた。
いや、何でそんな言葉使ってるの?公爵家の方達は!?
そう思ったが、多分情報漏洩を防ぐ為だという事だろう。
にしても、それだけのために1つの言語を覚えるのだから、天才達は頭の出来が違うのである。
でも、負けてはいられない。
ベルティーユもアルトーの言葉を元に、滅んだ国の言葉を中心に調べていく。
「……分かったぞ……古イルマリ語だ……」
「ほへ?」
顔を上げれば、輝かんばかりの笑顔で、アルトーがずずいっと本を差し出してきた。
「近い言語がイマリ語に、ロス語、単語の一部しか聞き取れなかったけれど、この言語を使っていた地はこの辺りで、古くは古イルマリ語が使われていたんだよ。辞書や文献を調べないと分からないし、公爵家で秘匿されているかもしれないから、確実にはそうと断定できないけれど、ほぼ間違いないと思う」
負けた。
完敗した。
狭い世界で、天才だと思っていた事が恥ずかしい……!
ついでにベルティーユが調べていた土地は、かすってもいなかった。
それに、答えに辿り着いた時のアルトーのあの笑顔に、胸を撃ち抜かれてしまったのである。
地味顔が輝いて見えるなんて、詐欺ですわ!
その日、ベルティーユは必死に親に頼み込んだ。
アルトーと婚約したい。
してくれなきゃ死ぬ、と脅したのだ。
しかも、何故婚約をせがまれたのか、顔合わせの当日ですら、アルトーは理解していなかった。
いつものあまり感情を出さない地味顔で言ったのだ。
「君と会った事ありましたか?」
失礼ね!と怒っても良かったのだが、絶対に思い出せる魔法の言葉を使う事にした。
「古イルマリ語」
途端にぱあ、と彼の顔に驚きと笑みが広がる。
「あの時の、君だったのか」
「そうよ。忘れるなんて失礼ね」
「……すまない、もう忘れたりしない」
そんなこんなで10年近く。
グレイシア様の目に留まって王子殿下の側近に召されたのはいいけど、あの王子には勿体ない。
でも、アルトーが優秀な事は秘密にしておきたかった。
でも、もっと良い仕事がある筈なのに。
ベルティーユはぐるぐる考えていた。
「ねぇ、アルトー。貴方の事、グレイシア様に進言しましょうか?こう見えてうち寄子だから、ある程度融通が利きますのよ」
「いや、いいよ。グレイシア様達、殿上人に比べたら僕達は平凡な……いや、君は優秀だけれども」
「アルトーだって凄いんだから、だって、もう10カ国語喋れるじゃない。速記だって出来るし、この前なんて暗号解読の仕事を押し付けられていたでしょう、お父様に」
矢継ぎ早にベルティーユが言えば、アルトーは苦笑して手を振った。
「まあ、あれは謎解きだから遊びみたいなものだけれどね」
「優秀なのはわたくしだけが知っていればいいって思っていたけど、駄目だわ、そんなの」
「落ち着きなさい、ベル」
優しく窘められて、ベルティーユはむふぅっと頬を膨らませた。
グレイシアが見る目がない、なんて言わない。
彼女は色々な人達を、見なくてはいけないのだから、地味で平凡に見えるアルトーが分からないのも無理はない。
それに、能のある鷹は爪を隠すのだ。
鷹本人だけじゃなく、関係のないベルティーユも隠しているのだから見つかりっこないのである。
数日後、アルトーが怪訝な顔をしてベルティーユに問いかけた。
「ベル、君、グレイシア様に何か言ったのかい?」
「……言いたかったのですけれど、貴方が優秀だってばれてしまったら、グレイシア様も貴方の良さに気づいて伴侶に…」
「ないない、無いから落ち着いてくれ」
あるかもしれないじゃない。
そしたら太刀打ちできないじゃない。
ベルティーユが頬を膨らませていると、アルトーはくすりと笑った。
「辞令を頂いたよ。卒業したら、エトガル様の元で秘書官となる事が決まった。言語に精通しているのは君も同じだから、一緒に隣国へ行って欲しいと」
エトガルとは、アドモンテ公爵家の三男で、グレイシアの兄である。
現在は外交の為にモンテール王国にいると聞いていた。
「……え、じゃあ!」
「給料もとても良い上に、楽しそうな仕事で、更に君と一緒に行けるのならこれ以上の話はない」
ああ、やっぱり神様は見てらしたのね!
それに、グレイシア様はやはり、見る目がある!!
早速お礼を言いにいかなくちゃ!とベルティーユは次の日、グレイシアのサロンへ行く途中、レクサスに捕まっているグレイシアを発見した。
スッとベルティーユは柱に隠れて、壁に同化する。
グレイシアはつい先日、あの馬鹿王子と婚約を解消していた。
何故なら、馬鹿女に現を抜かして、正妃にするとか世迷言を言い出したからだ。
あの女ときたら、私の婚約者にも誘いをかけてきていたというじゃないの。
アルトーは全然相手にしてなかったし、もっと見目が良い男がいればカリンは簡単に目移りするから実害はなかったけれど。
勿論それはそれとして文句は言ったけどね!
で、今更何の用なのかしら?
ベルティーユは耳を澄ませた。
「シア、君の仕事は多岐に渡っているから、私の側近だけでは片付かないんだよ。だから、手伝って欲しいのだが」
「王子殿下。わたくしは既にハルトムート殿下と婚約している身ですので、名前で呼ぶのはご遠慮くださいませ。愛称など以ての外にございます。……それに、片付かないでは済まされません。わたくしはもう他国へ行くのですから、何とか殿下と側近の方々で対処して頂かないと」
柱から少し顔を出して見てみれば、レクサス王子は信じられないという様に傷ついた顔をしている。
いや、そこは違うでしょ?
浮気して婚約者を捨てた男が、何で仕事手伝ってって言いにくるんですかね!
で、断られたら驚くって…何!?
驚くの見たこっちが驚きますわよ!!
「そんな……グレ……アドモンテ嬢、少しの期間で良いのだ……その、カリンがもう少し仕事を覚えるまで…」
「いえ、わたくしは数日以内には帝国へと赴きますので、お力にはなれませんの」
それは初耳ですわね?
ちらっと覗けば、レクサス殿下も勿論驚いている。
顔色もすっかり青を通り越して白い。
ざまあみろ。
あ、いえ、不敬ですわね!
でも、グレイシア様が、もう帝国に向かわれるのね……!
これはアルトーにも伝えなくっちゃ!
ベルティーユは柱の陰で大きく頷いた。
納得いかないように、レクサス王子の苛立った声が響く。
「卒業まであと半年近くもあるではないか、何故、そんなに急ぐ……!」
「わたくしはそもそも、この学園の卒業課程をとうに終えておりますの。通っていたのは王国の臣民である皆様と交流を図る為でしたから、もう十分用を終えました。それに、帝国で学ばねばならぬ事も数多くありますので、無駄な時間を過ごしてはいられませんの」
無駄な時間、にレクサスが反応した。
「私と過ごす時間が、無駄だと、いうのか……!」
えっ?
逆に聞きたいですわ?
無駄じゃない事あります???
思わずベルティーユは飛び出して問いかけたくなってしまったが堪える。
怒りをはらんだレクサスの声に、グレイシアは穏やかに言い返した。
「殿下はもうずいぶん前からカリン様と多くのお時間を過ごされてきましたでしょう?これからの人生も、共に過ごされるのはカリン様なのですよ。お間違えなきよう」
お門違いの事で怒っても、静かに訂正されて、振り上げた拳をただ下ろすしかない愚かしさ。
良かったですわ、アルトーがずっとこの馬鹿に仕えて、扱き使われずに済んだのは幸いでしたわ!
ていうか、無駄な時間すら過ごしてないではないですか!!
時間ごと否定されましてよ!?
だが、王子は諦めない。
「俺を、愛しているのだろう?だったら、困らせないで、此処に残ってくれ……!」
ええ~~~!?
どこまで面の皮が厚くていらっしゃいますの~~!?
王家の方は特別製なのかしら。
遥か南の国に居るサイという動物は、皮膚の厚さが5㎝もあると聞き及びますけど、その位はありそうですわね!
自分は愛さなくても、無限に愛されるっていうその自信は一体何処から?!
尽きますわよ?
それはもう愛を返されなければ普通に、尽きますわ!
枯渇しますし、何なら地盤沈下も止む無しですのよ!
「殿下。わたくしはもうハルトムート様に嫁ぐ身です。貴方を困らせる為に言っているのではありません。殿下がこの先愛を受けるのは、カリン様と正妃様もしくは側妃様です。婚約者のいるわたくしにそのような言葉は……お慎みくださいませ」
「……カリンと別れれば良いのか……?」
どうしてそうなりますの~~!?
今更そんな事言われても、終わったものは終わったものですわよ!
何もう一度勝手に始めようとなさってるの!?
地底からの敗者復活戦ですの?
どうぞ地の底にお帰り下さいませ!!
ベルティーユは思わず地団太を踏みしめたくなった。
500回くらい。
「なりません。カリン様のお気持ちをお考えくださいませ。貴方の我儘で伴侶に望まれて、望まぬ立場に心細い思いをしていらっしゃるでしょう。その上、そのお気持ちを踏み躙って、突然お捨てになられては、外聞も今より悪くなります」
「私だけが望んだ訳ではない!カリンもそう望んだのだ……私を愛しているから、傍に居たいと……!」
ええ~~~!?
まさかの責任転嫁ですの!?
それを、受け入れたのは貴方ではなくって?!?!?
だから自分は悪くないって、そう仰りたいの!?
そんなの通用なんてしませんことよ!!
さすがのグレイシアもため息を零したのが、ベルティーユの耳にも届いた。
「でしたら猶更、そのお気持ちを大事になさってあげてくださいませ」
「君はどうなる……私を愛しているというのに、身を引くのか……?」
はああああ??!?
馬鹿?
馬鹿以下の馬鹿ですわね!?!
今更っ何を言ってやがりますの???
君はどうなる?じゃないですわよ!
お前がどうした?ですわあああ!
「既にその話は終えたはずですわ、殿下。わたくしは第二皇子殿下の求愛を受け入れて、帝国へと嫁ぐのです。以前、もう5年にも前になりますけれど、帝国に行った時に再会して見知った仲でございますの。彼とはまたこれから愛を育んで参りますので、どうぞご心配なく」
「……え、………あ……他の、他の男を愛すという事、なのか……」
おい、糞王子?
お前もう既にそれをやりやがってましたよね??
何で浮気されたみたいな言い方してんの??!?
自分は婚約者以外を愛して別れた癖に、その後、相手が別の方を愛すると驚くって一体何なんですの?
ハァァ??ですわよ!
本当に!心の底から!地獄に堕ちろ!くださいませ!
「ええ。だから心配には及びませんわ。殿下は殿下の愛を大事になさいませ、ではご機嫌よう」
「待っ…」
今ですわ!!!
まだ縋ろうとするレクサス王子を遮るように、ベルティーユは柱の影から飛び出した!
野生のベルティーユが現れたのである。
グレイシアは驚くことなく、くすり、と笑んだ。
「グレイシアさまぁぁ~~!お探ししておりましたぁぁ~~~!」
大声で呼べば、中庭の人達の注目も集め、レクサス王子は差し出しかけていた手を引っ込めた。
小走りでグレイシアに駆け寄ったベルティーユは首を竦めて、軽く膝を折って挨拶をする。
「はしたなくも、大声を出しまして申し訳ございません」
「いいえ、宜しくてよ。こちらこそ気づかずに申し訳なかったこと」
微笑みを浮かべたままグレイシアは鷹揚に頷いた。
「わたくしの婚約者のアルトー様の件ですの!一緒に隣国へ行っても良いという許可をありがとう存じます。前々からアルトー様程の天才を事務仕事で忙殺されるのを歯がゆい思いで見ていたのです……」
「それは申し訳なかったわ。彼の実力にわたくしも気づけなかったの」
「いえ、謝罪などされては困りますわ。わたくしも彼もその事は隠しておりましたし……」
あら?というように、グレイシアの目が悪戯っぽく輝いた。
ベルティーユもふふっと頬を染めてくねくねする。
「わたくしが彼の知性に惹かれて、強引に婚約を持ちかけたのですわ!実は、以前アドモンテ公爵家の図書室に通っていた時期がございまして…」
「あら、ええ、確かにお見掛けした事がございますわね」
思い出すように視線を巡らせてから、グレイシアが優雅に頷いた。
その背後にまだ何か言いたげに、馬鹿王子が亡霊のように立ち尽くしている。
早く天に召されてくださいませ。
「そこでですね、公爵家のお兄様方とグレイシア様がお話している所へ通りかかりまして、皆様のお話している言葉を特定したのがアルトー様なのです!」
「まあ……!」
大きな目を見開いて、グレイシアがベルティーユを見た。
ベルティーユは更に得意げに胸を反らす。
「まだ10歳にも満たない頃でしたのよ!だから、わたくし、アルトー様の才能を知られたら、きっと婚約が殺到してしまうと思って、隠す事にしたのです!!」
「まあ、愛していらっしゃるのね。素敵なお話をありがとう、ベルティーユ嬢」
「わたくし達も卒業課程は終了しているので、グレイシア様と共に旅立つことに致しますわ。何かご用命がございましたら、何時でもお手伝い致しますので、エトガル様かわたくしにお手紙をくださいませね」
ぽんぽんと小気味よく喋るベルティーユを見ながら、グレイシアはくすくすと笑って目を和ませた。
ハッとしてベルティーユは、淑女の礼をきちんと披露しながら言う。
「ご挨拶が遅れましたが、この度はフォルケン帝国第二皇子ハルトムート様とのご婚約、おめでとうございます。わたくし、グレイシア様のお幸せを心よりお祈り申し上げますわ」
「ありがとう、ベルティーユ嬢。わたくしも心から貴女達の揺るがぬ愛をこれからも応援していてよ。本当に貴女達はお似合いのお二人ですわ」
ベルティーユの声を聞きつけて、中庭に居たご令嬢や通りかかったご令息がたが、グレイシア様を取り囲んで婚約のお祝いの言葉を口にする。
今までずっと、恐れ多くて口に出来なかった人達もいるだろう。
それだけアドモンテ公爵家は、王族なみに声をかけ辛い存在なのだ。
居た堪れなくなったのか、やっとレクサス王子が背を向けて悔し気な表情のまま歩き去る。
さっきは天に、と思ってしまったけど、間違っておりましたわ。
地の底に引きずり込まれてくださいませ。
「……という訳ですの!ですから、わたくしとアルトーも国外脱出を早めましょう!」
「……そうか、そうかぁ」
アルトーは遠い目をしたが、目の前で力説するベルティーユを見て、微笑んだ。
「よし。明日中に書類は全て揃えよう。君も旅支度をしておいで。三日もあれば国外へ出る許可も下りるし、旅馬車の貸出や資金面についてもグレイシア様が便宜を図って下さっている」
「わたくしも……ええと、何をどれだけ持って行けば良いのでしょうね?」
「気に入っている宝飾品と、夜会用と日常用のドレス数着もあれば良いと思う。向こうでまた揃えればいいのだから」
持って行きたいお気に入りの物は、今までアルトーがずっと贈ってくれていた贈り物だけでいいわ。
ベルティーユは真っすぐにアルトーを見て笑顔を浮かべた。
「今日、グレイシア様に仰って頂けたのよ。お似合いの二人、ってわたくし初めて言われてよ」
「ああ、それは嬉しいな。これからもそう思って貰えるように努力するよ」
「わたくしもですわ!」
親にもグレイシアからの根回し済で、書類仕事はアルトーの得意分野である。
二人は難なく、グレイシアの旅立った日にアルテシア王国を後にして、隣国のモンテール王国へと出国した。
引き留められると分かっていたので、アルトーは素知らぬ顔で前日まで勤務して、引継ぎ指南書まで作成したのである。
それを置き土産にして姿を消したのだが、大量の事務仕事を黙々と熟していたアルトーの能力を周囲は過小評価していた。
居なくなった事で訪れた混沌に、生徒会は勿論の事、王子の公務にさえ影響を及ぼしたのである。
そんな地獄を知ってか知らずか。
ベルティーユとアルトーは婚前旅行を余すことなく満喫しながら、輝かしい未来の住処へ向かったのである。
前回はアンケートありがとうございました!色々なナス美味しかったです。
ナス以外の番号も参考になりました!感謝!
皆様の優しさに涙しました。大好きです。
このシリーズ暫く週一は更新しますが、年末年始頑張れるようにちゃくちゃく書き溜めてます。
王様も…と希望があったので、王様書けるかなあ?王妃編で皆さんお腹いっぱいになっちゃうかもしれないですが。
王妃→カリン→ユーグレアスを予定してます(確定)
あとはレナトとルシャンテ…ですかね、レクサス視点はVS王妃をもういっかいくらい(未定)
側近は無能ではないんですよ…ただ優秀じゃないだけなんです(グレイシアが選びました)
楽しんで貰えたら嬉しいです。
もうすぐクリスマスですね。
ひよこはラ・メゾンのタルトが好きですが、ビアードパパのシュークリームも大好きです。
おすすめのケーキがあったら是非教えてください!