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シガレット
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習慣は日常への執着に起因している
それは理屈ではなく生存本能
私はもう彼女と一緒にはなれないんだ
あの頃には帰れない
悲しいはずのことを理解してしまえる
そしてそうあるのだと諦めてしまえる
生まれながらに乏しかった幼さだ
こんな体たらくでは到底彼女には届かない
縋られない、触れられない、心を許されない
愛があろうとも、私はもう子供じゃないのだ
揺るがない唯一があろうとも、幼い日の温もりは
現実が連なり動き出した途端風化してしまった
いとも簡単に、彼女が全てを変えてしまった
否、気付かされてしまった
実を結ばない夢に溺れていられるほど自由じゃない
私はもう大人になってしまったのか
諦めた数が成熟を促すのだと聞いた事がある
それが大人と子供の差だと
睡魔に襲われるほど沢山諦めてきた人生だったが
私はいつから大人だったのだろう
大人は寂しい生き物だと思っていた
けれど、それは寂れた遊園地の様な閑散ではなく
空腹な狼が涎を堪えてつつ小鳥を愛でる様な
煙草を咥えていないのに息を吸ってしまう様な
飴玉ではどうにもならない
そういった口寂しさだった
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