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母体
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思い出がふとどうでもいい事に思えた
愛おしく狂おしく魅かれていたのに
ふと何も感じなくなってしまった
何も思わなくなってしまった
全てが無価値に思えた
諦観でも絶望でもない
これを人は平穏と呼ぶのだろう
柔らかなクッションに囲まれて
ふわふわとぬるま湯に浸る様な感覚
人はこれを幸福と呼ぶのだろう
信念や自我さえ溶かしてしまいそうな靄中
だんだんと甘く痺れていく空気
まるで生殖行為だ
何もかもを忘れて
痛みも苦しみも全てがどうでも良くなって
ただ悦び、もっともっとと乞う
そんな人生はなんだか
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