ルトロヴァイユ
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瞼の裏で涙を揺蕩わせ
漠然とした痛みが幸福感を焼く
真っ白な紙が燃えていく様な
そんな苦味に戸惑った
真実か年齢がそうさせたのか
貴方に重なった影が烟り
甘やかな夏の記憶を蝕んで行く
境目を忘れた手と手を見つめて
何故だろうと問いかけた
無くしたピアス、三色のかき氷、香水の匂い
薄ら透けた浴衣から目を逸らして帯を締めた
経験が何を教えてくれる
寝惚け眼で探れど君はいない
見えない何かに振り回されて
ボロボロになっていく日常が辛い
これ以上繰り返したくない
幸せの後は漠然とした闇が胸の奥から溢れた
幸せ、いや、幸せだったのか、確信が無い
もう目の前に貴方が居ないから
記憶の淵から壊れていく
自己嫌悪と後悔が押し寄せる
これを倒すために消耗して廃人は生きている
ただ、そんな事が脳裏をよぎった
人生に強壮剤はあるが、特効薬はないのだろう
塩辛い夢を持ち帰って眠る前は天井を見つめた
刹那的な快楽に似たそれに質量はなく
幼心を淡く想起させた儚さは
白昼夢に等しい糸だった
血の色をした迷信だった
ありふれた感情が煮詰まる
人混みに紛れ、流れてきた貴方の匂い
ブランドの香水の匂い
溶けて触れ合う会話は時間を止め
しかし解けて触れ合う会話は無かった
そう、無かった
無かったんだ、何もかも
私は未だ脈打って、ありふれた恋心に声を殺すけど
あの子にはそれが無い
当然だ、明白だ、これは真理だ、そして正解だ
何も無かったんだ、最初から
いつかせめてと欲した白昼夢さえ此処には無かった
無かったんだから、無かったんだよ、無かった
無かった、無かったんだ
最初から
6/8
書かなければいけないと思った。
書かなければこの感覚を忘れてしまう、過去になる前に綴らなければ一生理解できなくなると思った。




