2/54
月
ー
ー
容易に手に入るような幸福を嘯かれて
自覚症状のある偶像崇拝は掻き消された
悲しくて寂しい夜を繰り返したい欲望と
穏やかに凪いだ朝の寂寞が一致して
さようならだとか大好きだとかいう雑多な口語が
心の現在地を体に刻み込んでくれた
私のことなんて、誰にも知られたくない
独りぼっちのまま死にたい
儚く、霞む微睡の中に生きたい
数学の海に沈んで、物理の大海を眺めて
音の波に酔いながら、渦巻く激情に焼かれて
やがて枯れていく心と焦げた体を小説にしたい
死にゆく私を愛したい
こんな気持ち誰にも分かるわけない
同一化しなければイコールにはなれない
類似性は届かなくて虚しい
けれどそれがいい
とても可憐で痛ましく、悩ましく憂い
なのに尊くて殺したくなるくらい愛しい
こんな感情はやっぱり誰にも理解できない
断片的なものならまだしも
このこれを完全に言葉にするのは不可能だから
そういったパラドックスも装飾して
だから、もう無理で、
何処にも行けないし、何処にも帰れないし
何も手に入らないし、苦痛も手放せなくて辛いけど
悲しくて悲しくて仕方がないけれど
それがそうだからいいんだと、思えたんだ
ー
ー