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殻座

歴史が嫌いだった

他人の過去まで背負っていられなかった

哲学が嫌いだった

他人の言葉で人生を語られたくなかった

文学が嫌いだった

他人の規則で表現を計られたくなかった

宗教が嫌いだった

他人の許容を目当てに生きたくなかった

偉人が嫌いだった

正確には、死人を神聖化する世間が嫌いだった

死人は神でも、超人でも無い、只人だ

芸術が好きだった

死人も、神も、只人も等しく自由に表現される

数学が好きだった

死人も、神も、只人も等価になる

科学が好きだった

自然法則に準拠する世界が心地よかった

「あの子はあのままでいいのか」

人伝にそう言われていたと聞いた

良い訳がない、良い訳がないだろうが

こんなところで止まっている時間は無いんだ

「今」を見れるようになって

涙に理由は要らないと知れて

過去を許せそうになって

それでも、生きていることが痛くて

痛くて仕方なくて蹲る

嫌だ、こんな人生は嫌だ

誰かのせいで、過去のせいで

他責を言い訳に腐る未来は嫌だ

変わりたい、脱ぎ捨てたい、世界を破りたい

卵の外に出られず死ぬなんて真っ平なんだ

卵は世界だ、ヘルマン・ヘッセはそう書いた

殻を破るためなら

嫌っていた他人の軌跡でも何でも用いよう

私は戦場に戻りたい

卵の外で君に会いたい

私を証明してやりたい

死ぬなら君を抱いてからじゃないと

死ぬなら君に抱かれてからじゃないと

かっこいい私になってからじゃないと困るんだ

もう一度あの場所へ

孵化して、生まれ変わった私で、生きたい

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