LINE
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心象と差別、鉄塔と電波塔
言葉と旋律、質量と体感温度
死んでしまったのだ
死んでしまったのだ、という重み
それは寂しい事なのだと気づいた
祖父母の家で飼われていた犬
君の代わりはないと歌い続ける作詞家
死の価値は火を見るより明らかだ
犯罪者も碌でなしも
死んでしまえば聖人だ
まるで錬金術だ
否、生命の最も原始的な変化を投影し
人智の及ばぬ術を扱う夢を見たのがそれか
不老不死、金、浄化、ホムンクルス
どの様な小さな欲望でも
叶えるには相応以上の死が重要になる
重い価値を孕むが故に
或いは重要であるがために
死は聖域への境界なのだろう
事象の地平面
その向こう側へ行けば最後二度と戻らない
そして表面には墓標の上位互換が記述されている
境界とは一体なんだろう
心象と差別、殺人鬼と英雄
顔面と中身、人間とスパゲティ
生死の間にあるのは臨界か境界か
きっと人は基礎的な部分で盲目になっている
紙面或いはデータにおける1は1でも
他人と君とは別の1で
それを認識できるのは私が同族だからだ
モノにも一つとして同じモノはない
個体差を把握しきれないが故に理解できない
処世術的な区別が盲目を生み
社会において差別という形で表面化する
数学も社会も音楽も人も精神も宗教も
人が開拓した同一次元の系統樹
人以外からすれば同じ1だ
ゴキブリの顔は見分けられない
ルッキズムの風潮でコミュニティに蔓延する栄養失調
政治不審により右に偏った者が真剣に謳う陰謀論
私からすれば同じ事だ
けれどそれが、モッツァレラとゴルゴンゾーラなら
全くの別物だ
人は人に偏っている
死んでしまったのだ、という重みは
人間が生み出した概念だ
寂しいという感情も
人間にしか通じない体系における一名称だ
犬にも同じかそれに準ずる感情があるという
その共通点を見出しておきながら
人はゴキブリに感情があるのかと滅多に考えない
心象と差別を無意識に悪気なく混同する
ゴキブリと犬、差別しない人間がいるだろうか
区別と差別と心象とイデア
人間らしい言葉に当て嵌めるなら
これが人の格というものだろう
パンは金になれない
仮に金になったパンがあったとして
はたしてそれはパンなのだろうか
極めても人はラプラスの悪魔になれない
その境界線は、臨界線は、LINEは
人が人であるために必要だ
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