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あの瓶に水を差す
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腑に落ちた
彼女とのことはそうだった
対岸を覗き込むのを辞めたのは
死ねなかった理由に思い当たったから
会いたかった
触れたかった
欲しかった
もう一度、またあの日のように
もういいよと見抜いて欲しかったんだ
落っこちてそれっきりの僕が遺した未練
それが彼女だった
けどもう半分死んだ
落っこちてそれっきりの僕は死んだ
遺されたもう半分は、ルトロヴァイユで
死んでしまった僕を諦めた
結局、私は彼女の手を離した
だって私は死んでしまった僕じゃない
底抜ける前のあの頃の様には生きられない
旅路でアリスと出会った
私は僕じゃなかった
シュレディンガーの猫は蓋を開けた
死人の弔いに不可逆の人生を捧げられない
他人のために生きられない
骸は、過去は、痛みは、彼方側に捨てる
絶対は無い世界だ、可能性の話だ
それ故にまだ私は此処に生きている
生きているから、死んでいないんだ




