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渇望の正体
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何故向き合うことを恐れるか
どうにもならない激情が暴れて
胸の奥が耐え難い瘙痒感に襲われるからだ
絶頂感を堪えるのに似ている
焼け付く痛みより和らいでいるが
薄皮や瘡蓋を剥いでしまいたくなるのと同じ焦燥
物理的な痒みなら患部を冷やせば良いが
精神的なこれを冷やす術を私は持ち合わせていない
故に掻きむしることも出来ないそれに
狂いたくなってしまう
鳩尾の奥で、欠けているのだ
私の奥底は透明な鋭角に貫かれていて
同質の膜がその周囲で絶え間なく割れ続けていて
無数の細かい破片が柔らかい部分に刺さっている
ピンセットが見当たらない
熱の冷まし方がわからない
否、除去して、冷まして、忘れて、
果てに失ってしまうことを恐れている
だってその破片は瘙痒感は狂おしい程の激情は
私そのものだった何かだから
欠けてしまった私そのものだから
だから痛むのではなく痒いのだ
漠然とした焦燥感、本能が拒絶している
そうか、このままでは死んでしまうから恐がるんだ
痒いのは死にたくないからだ
この渇望は生存本能の成れの果て
生得的に備わった、私が生物である事の証明だ
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