126/176
落莫たる一夜花
ー
ー
空漠たる彼の地は理想郷ではない
しかし安寧の地でもない
例えば、陽だまりで微睡む在りし日の追慕
例えば、鳴蜩の目覚めを待つ彼誰時
例えば、風に舞う錦に見惚れる冬隣
例えば、珈琲を片手に見つめる夜の氷雨
例えば、眠る私を撫ぜる手のひら
例えば、眼裏を眺め君と語る夢現
そういう刹那に咲く別世界
超新星残骸に根を張って
事象の地平面に咲く、落莫たる一夜花
廃材アートに根を張って
透明な隔たりの境を裂く、ナイトクイーン
それは部屋の隅とか、枕元とか、遠くの街とか
日常のあらゆる場所に芽を出すけれど
地続きのこの世では咲いていられない概念
好きな人とするキスの向こう側にある
漠然としているが確信的な何かが
きっと彼の地である、此処ではない何処か
ブラックホールを裏返すまでは私にも理解できない
イデアに似た浄土のこと
ー
ー




