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黒い羊毛
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胃の中がムカムカしていたけど
君との約束だから、吐き気を堪えて食事をした
外を見たら秋空に夕月と茜色の雲があって
君に見せたいと思って、写真を撮った
十月に混じった冬が部屋を満たして
君がいないなら凍え死ぬのも悪くないと思った
君がいないなら、私がこれまで飲み込んだ真実を
誰のためにもならない生々しい話を
躊躇いなくぶちまけて
偽物の家族を、偽物の私を、壊してやろうと思った
「いつまで待てばいいんだろう」
原因は私なのに、なんて自分の事ばかりなんだろう
数時間、数日、数十日、死刑か、猶予か、何れにせよ
もうあの日々には戻れないんだろう
私が壊した、大切な時間
来世は
才能も、夢も、寿命も、いらないから
間違っていない人間に生まれたい
なんて現実逃避をしている
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