脚の太さを気にする人は多いけど、好印象だってことを教えたい
「全軍速攻! 【円卓の悪騎士】のアクションに余裕を与えるな!」
二十人を率いて先頭を駆ける紫髪のハーフツインテールの女騎士。後方に従える部下達も力の限り彼女のばっくりと開いた背を――短いスカートから覗く白き脚の後を追う。
「よ~こそ~ウチ等のアジトへ~! アジトの場所を突き止めたご・褒・美! 真正面からご対面~!」
【呪具安全対策委員会】の一行が通路の角を折れた踏み入れた瞬間、まるで通路が生きているかのようにうねり、彼女達の前に新たな一本道が形成された。
「恐れる事は無い。行くぞ!」
一本道を突き進み、全軍が大広間に足を踏み入れる。
そこには逃げも隠れもせず立ち塞がる三人の悪役勇者達が。
「飛んで火にいる夏の虫。侵入早々本命に直接導いてくれるとは思いもしなかったよ……ギン・アロンダイト、フェローテ・フェイルノート、一人は知る顔ではないが……【呪具安全対策委員会】委員長モモ・フトイデが今日こそ貴様達を処してやる!」
腕を振り払い、士気を鼓舞するモモ。
一触即発の敵対関係にあるモモの堂々宣言に【円卓の悪騎士】はというと。
「ようフト・モモコ。今日も太ぇふとももしてんな」
「よっ! ナイス肉付きっ!」
初対面でどう反応するのが正解か判断しかねるガルド以外の二人はモモを絶賛(?)した。
そんな二人の揶揄に少女が反応しないわけがなく。
「フト・モモコ言うなぁ!! わたしのふとももは太くない!!」
「太ぇって」
「太くないって!!」
「委員長の異名【神脚】じゃん。認めチャイナYO!」
「【神虐】だって! 【神虐】ですら可愛くないのに誰だよ【神脚】の異名流行らせた奴!?」
『ふ――モモ委員長のふとももの太さはもはや誇るべき芸術です! 恥ずべきことではありません!』
『僕等はふ――モモ委員長のふとももの味方です!』
『『『いーんちょっ! ふーともも! いーんちょっ! ふーともも!』』』
「うっさい……全員死ね……!! ごたごた言わずに全軍かかれぇ!!」
憤激が限界に達したモモは総攻撃指令を繰り出し、一時の緩やかな空気は一瞬にて霧散した。
「チッ……大して時間稼ぎも出来なかったか。さーて、やるぞテメェ等」
集団で襲い来る【呪具安全対策委員会】の連中を前に、ギンは掌を引っ掻き自ら流血する。
「モブじゃ役不足だ、出直して来い。『操液」
「ギンの奴、何して……血が宙に浮いてる?」
幾多の剣戟を回避したギンは返報と言わんばかりに微量の血液を数人へと付着させ。
「斬血」
「「「ぐああぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
ズバッ! と。微量の血痕は巨大な凶刃となり、戦人を大きく負傷させた。
「安心せえ、峰打ちかもな?」
(ギンの能力は血液――いや、もしかすれば液体全般を操る能力か? すげぇ能力だな……)
初めて見るギンの能力を、攻撃を掻い潜りながらガルドは分析する。
そんな右眼を閉じたガルドの視界の端に圧倒的数的不利を強いられる少女の姿。
「悪人のウチにとって君達みたいな光は眩し過ぎるんだよね~。ゴメンネ、その光がある限りウチに攻撃は届かない。吸収武装――『ベンタブラック』」
漆黒よりも漆黒の黒靄を体の周囲に漂わせるフェローテ。
誰から見ても隙だらけの立ち姿に【呪具安全対策委員会】の者達は一斉にフェローテへと得物を振り下ろすも、得物は黒靄に阻まれる。
「な……!? 武器が呑まれ……うわぁー!? 俺達まで引き摺り込まれ――」
「ウチの『ベンタブラック』は全てを呑み込んじゃうブラックホールなんだ。ほ~ら、ごっくん♪」
「やはり貴様の吸収能力は厄介だな――『新爪』」
「おーっとぅ、そりゃお互い様でしょフトモモちゃん~。背後、上、下。宙に漂う幾多の屑を束ねてどこからでも遠距離攻撃・味方の援護が可能な『触手』攻撃も充分厄介だよ?」
「私の『束屑』を触手って言うな! 鞭爪だ!」
「ムチムチ? 誰もふとももの話はしてないよ?」
「それはこっちの台詞だ!!」
吸収の能力に呑み込まれそうな部下を間一髪で救い、更に鋭角的な鞭のような物体でフェローテの背後から牽制の一撃を繰り出したモモ。
(全てを呑み込む吸収のフェロちょと、空間一帯が創造・攻撃範囲の触手モモコ……なんちゅー高次元の攻防……これが俺が追い付かないといけない次元の戦い……)
人数差などものともしない仲間達の士気に当てられたガルドは、自身も無双したいという感情が湧き始める。
「っしゃあー! 俺もこのビッグウェーブに乗って――」
「おい小僧、フェローテに治して貰えるからって制御出来ねぇ憑呪使うんじゃねぇぞ? 法外な利用金取るぞ?」
「つ、使わねぇよ!? 憑呪使う気なんて一切なかったし!? いやほんとに! つうかよく考えればレロも療養中だし!?」
「嘘臭えなぁ。まぁいい、働け」
そんなやりとりを交わす【円卓の悪騎士】を脇目に、フェローテとやり合うモモは一人思考に暮れる。
(奴も呪具を……? ギン・アロンダイトに加え【円卓の悪騎士】に呪具持ちがもう一人……まだ制御出来ないようだが面倒だ……呪具を有しているのならば、制御を覚えられる前に始末しておくべきか)
「ギン・アロンダイト、私達【呪具安全対策委員会】が何故此度貴様達のアジトに侵攻を決めたかわかるか?」
「俺達に会いたかったからだろ? 奇遇だな、俺達もそろそろフト・モモコのふってぇふともも拝みたい気分だったんだよ」
「それは私に確実な勝機があるからだ」
「俺の渾身のボケがスルーされたの悲しい。つうかそれ毎回言ってる気するけど?」
「うるさいっ!? 今回こそは本当なんだ! 私達の切札――『聖具』の前に跪け」
「マジか。こいつぁヤベぇ――フェローテ! モモコだけでも分断し――」
「もう遅い。聖具――『呪怨の望まぬ救い手』」
ジャラッとモモの腰のアクセサリーが揺れると聖色の雷の如く魔力がギンへと飛来し、反応すらも許さないずギンは鳥籠のような檻に収監されていた。
「チッ、捕らえられる上に魔力も能力も禁止する鳥籠系の『聖具』か……呪具と正対する面倒な聖具持ってきやがって……だが副作用は使用者の能力値半減ってところか? こっちにはフェローテがいるんだぜ? テメェが能力半減になれば誰も手に負えねぇだろ」
「憎たらしいほどの洞察眼だな……確かに私の能力値は半減する。しかし聖具の効力は封印だけに非ず。チェイン――フェローテ・フェイルノート」
「ありゃ? もしかしてウチの能力も半減されてる? 身体重いんですケド~!」
途端に【呪具安全対策委員会】の攻撃を吸収できなくなったフェローテは顔を顰めながら回避に徹する羽目に。
「『呪怨の望まぬ救い手』は呪具持ちを強制封印、そして対象者を使用者と同様に半減する効力を持つ。私の魔力ではフェローテ・フェイルノートを半減するだけで精一杯だが制圧には充分だろう」
「あらら、こりゃ委員会が攻め込んできてから過去イチのピンチだなー。タイヘンだタイヘンだー。じゃあお前がやるしかねぇな――小僧、出番だぜ?」
ギンは封印され、フェローテは能力が半減。まともに戦える者はガルドしかいない窮地。
自身が敗北を喫すれば一気に壊滅へと向かう一戦にガルドは笑う。
「ったく、頼りねぇ奴等だな! 好きな色は悪色! 【円卓の悪騎士】大型ルーキーのガルド・エクスカリバーだ! 覚えて帰れよフト・モモコ!」
「貴様は私に負け、組織は壊滅する――今日は帰さないよ」




