サバイバル・オフィスラブ~会社生活はサバイバル~《短編バージョン》
ライザップ食品㈱という会社があるが、実際に某スポーツジム経営の会社もコンビニスイーツを扱っているが、その会社とは全く無関係の健康食品の会社だ。
その健康食品の会社の中に、一見すると健康食品とは全く関係無さそうな、取引先企業の与信管理なる業務を行っている部署がある。
俺はその与信管理部に勤務するサラリーマンの、頼沢山という、変わった名前の男だ。
頼が名字で、沢山が名前という、まったくうちの親はどんな根拠でこの名前をつけたんだかと、聞いてはみたが、答えてはくれなかった。
「ちょっと、頼君…。」
俺は与信管理部の事業管理課の課長に呼ばれた。
俺は与信管理部の中の、事業管理課という所に所属している。
そこの課長だ。俺の直属の上司だ。
「何だろう…。」
課長に連れられて行った先は、なんと社長室だった。普通は一般社員は立ち入りできないのだが、今回は特別な用件だということで、入れてもらえることになった。
「社長、お連れしました。」
「うむ。入りたまえ。」
目の前に社長がいる。これは夢じゃない、現実だ。
社長直々とは、何の命令だろう。
クビ!?異動!?栄転!?左遷!?
それとも、社長直々の命令による特殊任務か!?
いや、いきなり社長直々に呼び出しをして、普通はそういうことを考えるだろう。
それとも、まさか、おっさんずラブ!?
いろんなことが頭に浮かんだが、どうやら俺の仕事の担当者である女子社員、星野亜紀に関することらしい。
「星野亜紀なら、うちの部下の女子社員でありますが、何か?」
課長が答える。
「ふむ。頼君がその星野亜紀に気があるということは周知の事実だ。
そこでだ。頼君に社長である私からの直々の指令だ。」
そりゃあ、俺は確かに、星野亜紀には気があることは気があるが、だけどそれは、あくまでも仕事上のパートナーというだけのことで、それ以上でも、それ以下でもない。
「頼君に指令を与える。
これより半年以内に、君が星野亜紀を口説き落とし、そして両想いになること。
さもなくば、どうなるかは社長である私が決めることだ。
もしこれに失敗したら、君は出世への道が絶たれるどころか、この会社にもいられなくなるぞ。
つまり、君はクビだ。いや、ただのクビではなく、懲戒解雇もあると思え。」
懲戒解雇!?懲戒解雇というのは、不祥事を起こした社員に課せられる最も重い処分で、再就職すらままならなくなるという、アレか!?
なんで俺が星野亜紀を口説き落とせなかったことで、懲戒解雇にならなければならないんだ、と思った。
何を考えているんだこの社長は!?てか、こんな会社アリなのかよ。
だったらこんな会社、辞めさせられる前に自分から辞表をたたきつけて、辞めてやろうか、と思っていたが、そんなことをしたら、この社長のことだから、それこそ懲戒解雇にされてしまうかもしれない。
いや、最近は新たな手法で、資料室のようなところに閉じ込められ、そこでロクな作業もさせてもらえずに時間だけを過ごす、なんてのもアリか、と思った。
じゃあもう、俺がどうにかまともに生き延びるためには、星野亜紀を口説き落として、両想いに持っていくしかないじゃないか、
と思ったが、しかし実際には、星野亜紀から依頼された仕事内容を依頼された通りに行っているだけ。
担当者の都合で仕事内容が変わったりするなど、しばしばだ。
彼女の趣味や嗜好など知るよしもない。
俺の頭の中はモヤモヤしていた。そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら、社長室をあとにし、いつものデスクに戻る。
「どうしたの?社長さんに呼ばれたみたいだけど、何の話があったの?」
「あ、いえ、何でもありません。
それよりも何か依頼はありますか?」
「じゃあ、これお願い。」
「かしこまりました。」
これではとても口説き落とせそうな雰囲気ではなかったのだが、いつか、いつか、口説き落としてみせようと。
そして、両想いに持っていこうと考え始めていた。