第6話 電車の中での雑談
オカルト部の活動が、今始まる———
俺は走った。息が詰まっても走った。
それはなぜかって?
なぜなら、待合場所の駅まであと20分でつかなきゃいけないからね!
9時出発の電車の切符、もう買っちゃってるんだよ!
ちなみにあと1kmです!
普通の人なら走ったら余裕だと思うけど、俺、持久力皆無じゃん?
間に合うかなこれ!?
そう思いながら、俺は商店街、過疎地、工事現場などを超えて、最短ルートで駅へと向かった――――
――――18分後――――
「はぁ……はぁ……」
「ギリセーフですね。先輩。」
どうにか間に合って、(通常ルート1kmのところを近道で半分まで削った。代償は工事現場の機材を一個蹴り飛ばして、親方らしき人が俺を遠くからどなってきたことくらい)電車に乗り込んだ俺は、軽く呼吸を整え、皮肉な顔をしている恋歌の横に座った。
ていうか距離半分にしたのに18分もかかるとか俺の体力どうなってんの⁉︎
ちなみに恋歌は、今日は電車だからだろうか?ランを連れてきてはいない。
俺は、電車移動の暇な間、恋歌にあることを質問した。
「そういや恋歌。能力って、アニメや漫画でよくある2個ゲットとかできないの?」
「え?話してませんでしたっけ?できますよ?」
「じゃあ何でみんなルービックを探さないんだ?」
「えーとですね……実は能力が2つ手に入る代わりに、軽い応用しかできなくなるんです。」
「へぇ……。じゃあ恋歌の嘘だったらどんくらいグレードダウンするの?」
「私の場合、嘘をついたことが相手にわかりにくくするのと、相手がついた嘘がわかるものだけになります。」
「何その戦闘に全然向いてない能力。」
「私は戦いなんか欲してはいませんが、何せ使い勝手のいい能力ですからね……。狙ってくる連中がいるので追い返すのに、この能力は必要なんです。」
「へぇ……。」
「さらにいうと、能力は三つまでなら持てます。まぁ、三つの場合は応用なんかできないんですけどね……。」
「じゃあ、間違って四つ目を持っちまったらどうなるんだ?」
「あ、その場合、能力が使えなくなります。」
「え?基礎も?応用も?」
「イェース。です。まぁ私も四つ持った時のことはつい最近知ったんですけどね。」
おいおい恋歌さん?さらっとやばいこと言うのやめてもらっていい?
俺、危うく電車内でちびるとこだったよ?
だが、恋歌の爆弾宣言は止まらない。
「あとついでに言っておくと、ランも2個持ちですよ?」
「うん!新情報なんですが恋歌さん!これも隠し通すおつもりだったんですか?」
「はいもちろん!けど、私を守ってくれるんだったら、このくらいの情報、教えて当然かと思いまして。」
さらっと隠蔽する気だったことを明かさないでくれ……。
俺そんなに株低かったの!?
めっちゃショック!
「……あ、あと、恋歌は戦うことが嫌なのに、なんでこの前戦ってくれたんだ?トラウマとかがあるんじゃないのか?」
「まぁ、そうですね。けど、あの状況では下手したら何も知らない先輩も巻き込まれる。そう考えていたら体は勝手に動いていました。」
「……そうか。ありがとな。……けどこれからは俺がお前を守るから……」
「いや、まだ先輩能力使えないし、能力使えるようになったらなったで私に勝てるんですか?」
「……いや。絶対勝てる自信ないよ?」
「だったら私に勝てるようになるまでは私に先輩を守らせてください。これは先輩が無所属でいるっていう選択を取らせた私の責任でもあります。」
「了解。それまでは、頼らせてもらうよ。……あ、そういえば話変わるんだけど、この町に【芽晴……】なんとか軍がいるんだったよな?」
「めっちゃ急に変わりましたね……まぁいいでしょう。あります。芽晴学校軍ですね。風の噂によると、なんでも西高校学校軍とは犬猿の仲だとか……」
「へぇ……」
と、そんなことを話していると、
『次は〜、芽晴町〜、芽晴町〜』
いつの間にか厄芽山のある町、芽晴町についた。俺と恋歌はそこで降り、厄芽山へと向かう。
「ふう。」
「ここから2kmですか……」
引きこもりの2人からは想像できないような長い距離を歩いて。
――――――厄芽山 麓――――――
「やっと……」
「ついた……」
どうにか俺たちは、厄芽山についた。
さすがに引きこもり2人からすればこの距離はしんどすぎる。
だがそこに、思いもよらない人物が現れた。
「あれ?ロウラじゃん。ここで何してるの?」
「え⁉︎えぇ?…………雪⁉︎」
「雹だって言ってるでしょ‼︎」